No.21〜40
2002年4月29日
No.21 サントリー・グレフル / ピングレ
ユニークなCMで有名なサントリー・グレフルとピングレ。
実は、買ってきてプルトップを開けようとする瞬間まで、チュウハイだと思っていた。正解は、グレープフルーツを発酵させて作ったお酒である。
缶を開けると、まるでフレッシュジュースのようなみずみずしさ。作りたてのカクテルのような印象。
味は、「まあウマ」だが、「すごアマ」だ。イメージ的により甘そうなピングレ(ピンクグレープフルーツ)よりも、グレフル(通常の白いグレープフルーツ)のほうが甘ったるい感じがする。
酒飲みには許し難いほどの甘ったるさなので、お酒にあまり強くない若い女性向きの商品といえなくもない。
が、そもそもお酒に強くない人がコンビニあたりでアルコール飲料を自ら買うとは思えないし、女性でも酒好きな人はこんな甘ったるいものに手は伸びないだろう。
したがって、これを熱烈に支持する層というのが想定しにくい。下心を持った男が、一生懸命女性に飲ませようとする時に使えるくらいではないか。しかし、
そんな時は、然るべき店でカクテルなどを注文するという戦略をとるであろうから、結局どうにも使えないアルコール飲料だと言うほかはない。
最初はものめずらしさで購入しても、「かなクド」なので、「すぐ飽き」だろう。行く末の長くない商品だと思う。
2002年4月30日
No.22 サントリー 純生
最近、人間の営みってすごいなあと思うことがある。それは、発泡酒の技術革新に触れたときである。
当サイトでは、発泡酒を"積極的に"けなしてきた。その姿勢は今も変わらないが、こんなまがい物に対して惜しみなく技術を投入し、
着実にクオリティを上げていっているビールメーカーには、本当に頭が下がる思いだ。もはやここまで来ると、不毛な努力と片付けられないほどである。
無駄と思えることでも継続すれば、そこから何かが得られる。意図した結果とは違うものであっても、着実に何かが残される。そんな思いを、
私は、発泡酒全盛の最近のビール業界にみる。
パッケージも清々しく、「炭濾過」「磨き麦使用」「Clean and Mild Taste」などの文字にもその思想は現れている。
実際の味わいもかなりそのイメージに近く、発泡酒臭さを抑え込み、刺激は弱めで、まろやか。無論、飲み応えなどないのだが、
それが逆に心地よくもある。絶妙なバランスが構築されている。味わい深さなんていらないんだ、と錯覚させられてしまいそうな、巧妙な手口。
夏に限って言えば、重たいビールよりは爽快感があって良いかもしれない。
私は、以前からずっと発泡酒をこき下ろしてきて、その考えは今もいささか変わらないが、少しだけ見方を変えるきっかけとなった事件が、数ヶ月前にあった。
遠く離れて暮らす父親が久しぶりに我が家に来た時、もてなすつもりで、キリンクラシックラガーやらヱビスやらモルツスーパープレミアムやら、
良いビールを取り揃えていたのだ。ところが近所のスーパーに一緒に寄った時、「オレはこれがいいんだ」と言って、なんと発泡酒を買うではないか。
キリンラガーしか知らなかったような世代の人間が、今や発泡酒ファンになっている。私は愕然としながらも、こういう消費者に発泡酒は支持されているのだという
事実を教えてもらった思いがした。「なぜなんだろう」と自問しながら、得た答えは、ビールより手軽で、軽やかなテイストに慣れてしまうと、
本来のビールが重たく感じられてしまうのだろう、ということだ。その意味では、この「純生」のような軽やかさは、
ビールとは競合関係には立たない製品なのかもしれない。恐るべし、発泡酒。
2002年5月6日
No.23 キリン 淡麗 グリーンラベル
「糖質70%オフ」であるという。
色は当然の如く薄い。香りは通常の発泡酒のものだが、単純に、薄い。
味は、予想以上にスカスカ。ただ、そのスカスカ加減が中途半端ではなく、「味なんてなくていいんだ」
と開き直った感じがして、逆に潔い。単にサントリー・diet生
のものまねかと思っていたが、
あちらはただ味がないだけで長所がほとんど見出せないのに対し、こちらには爽快感がある。
嫌な後味もそれほど残らない。商品コンセプトが明快で、かつストレートに伝わってくる。
しかし、「淡麗」の名を冠しているのは、どう見てもヒット商品の七光りを利用したとしか思えない。
もちろん製法上、通常の「淡麗」から糖質だけカットしたのかもしれないが(いや、そうではないかもしれないが)、
仕上がりはまるで別物と言えるので、違うイメージで売っても良かったかもしれない。
積極的に飲もうとは思わないが、飲まされても不快ではない、というレベル。
2002年5月13日
No.24 チューハイ ハイリキ 旬果搾り レモン / 旭化成
CMでは堂本剛や矢田亜希子が出てきて、「居酒屋さんごめんなさい」という缶チューハイだ。
キリン氷結で火がつき、今市場を席巻している果実感あふれるタイプの缶チューハイだが、これはなんと果汁8%で、
そこが売りのようだ。しかし、ハイリキといえば、知る人ぞ知る缶チューハイの元祖で、現在の旭化成に買収される以前の
東洋醸造といっていた時代から、それこそ粛々とチューハイを造り続けてきたメーカーだ。
味わいも、昔から続くハイリキの色彩を色濃く残すもので、いかにも伝統的なチューハイといった威厳がある。
フルーティさよりも焼酎らしいボディの厚みがあり、後味には黒糖のようにコクのある甘味。
パッケージのイメージとはずいぶん異なるしっかりした飲み応え。
売り方は今風だが、中身は古風。最近流行の商品に慣れている消費者には、あまりアピールしないかもしれないが、
正統派の大人のチューハイを求める向きにはお勧めしたい。CMで私の大好きな矢田さんが言っているとおり、
居酒屋に行かなくとも、こっちでいいかも、って感じ。でも今、世間では缶チューハイに、こんな本格派は求められてはいないんだけどなあ。
売れてるのは、もっとジュースみたいなやつだ。その意味で、失敗作かも。
いやいや、そんなことは百も承知で、老舗のプライドにこだわった商品なんだろう。きっと。
2002年5月15日
No.25 キリン 極生
CM等の広告宣伝費を掛けないでコストダウンをはかり、その分販売価格を10円安くしたという商品。
発売当初、これに対抗するため、アサヒの本生なども10円下げていた。そこまで、各社戦々恐々とした135円だったが、
ふたを開けてみれば、意外と地味な展開になっている。
普通の発泡酒レギュラー缶が145円といっても、実際の販売価格はもっと安い店が多い。145円でそのまま売っても安いのに、
そんな状況では、もう10円安いとかそういうレベルで売上が爆発的に伸びるわけがない。100円を切ることができれば激しいインパクトもあろうが、
まあそれは技術的にも無理だろう。とすれば、今回の「極生プロジェクト」は、読みが甘かったと言わざるを得ない。
さて、肝心の品質である。
泡は比較的こんもりと盛り上がり、いい感じ。香りは、え?ビール?って思えるくらいのビール感があって、たのもしい。
だが、味わいは紛れもなく発泡酒で、香りの堂々とした印象とのギャップがある。しかし飲み応えのある部類であることは間違いない。
これ、普通に145円に設定して、CMガンガン入れたら、もっと売れるに違いない。涼しげなデザインもこれからの季節向きである。
発泡酒は所詮クオリティで真っ当な勝負ができないのだから、いかに他と違う特異性を押し出し、イメージ戦略に努めるかが大事だ。
最近では、サッポロ・ファインラガーと、サントリー・純生がうまい売り方をしていると思う。
(ファインラガーのCMで、「許す!」って一言が衝撃的だった。そうなんだよね、発泡酒って、基本的に「許せない」商品が多いから)
キリンは、淡麗の後光にすがりすぎて、消費者不在のひとりよがりに陥らないように注意すべきだ。
くれぐれもラガービールの二の舞にならないように。品質で勝負するとの自信があるのかもしれないが、
その品質で、消費者はラガーよりスーパードライを多く選んだという苦い経験を忘れてはならない。
2002年5月16日
No.26 サントリー マグナムドライ生・爽快仕込
だいぶ前に発売された製品だが、当サイト未掲載だったため、義務感に駆られ、急きょテイスティング。さて、感想は・・・。
ひとことで言って、ダメ、である。
泡は普通の発泡酒らしく、異常にきめ細かく白く、比重の軽そうな感じ。香りも典型的な発泡酒のもので、
一瞬清々しいミントのニュアンスがあるものの、すぐに穀物臭さに変わる。口当たりはとても優しく、
この点が、この商品の特質なのだろうか。マイルドで刺激がなく、よって飲み応えの微塵もない。
口中で発泡酒臭さが広がり、どうにもやりきれない。
カラッと軽いところだけが売りで、それ以外に長所なし。「爽快仕込」というより、「スカスカ仕込」だ。
これでは、競合商品と思われるキリン淡麗・グリーンラベルの圧勝である。
2002年5月17日
No.27 サッポロ きりっと 新・辛口<生>
サッポロより新発売の発泡酒。コンセプトが明確な商品だ。
香りは、むむむ、発泡酒臭くないぞ。単に香りが立たないだけだと言えなくもないが。
泡に力がなく、色も薄いので、見た目は実に発泡酒らしい。飲んだ瞬間のインパクトはなかなかのもので、
系統的には、マグナムドライに近い。鋭く切れ込む刺激。だが、後には何も続かない。
最初の力はどこへやら、最後はウニャ〜っと変な甘味が残る。結局、最初のインパクトだけだったのか。
まるで無謀な新人のエキセントリックな企画みたいだ。
新・辛口<生>との赤い文字あり。KARAKUCHI NEW TASTEとも(しかし、KARAKUCHIというのは、
海外でのアサヒ・スーパードライの呼び名ではなかったか?)。だいたい、名前に「新」なんて付けたものは、
長く続ける意志のないものと相場は決まっている。新生党とか、新進党とか、新加勢大周とか。
冗談はさておき、一発屋の要素をふんだんに持ち合わせた「新」製品だ。
2002年5月19日
No.28 キリンチューハイ 氷結 オレンジ
「自信があります」とのキャッチコピーで登場したチューハイ。この氷結シリーズは、いままでレモン、グレープフルーツと
極めてフレッシュでピュアなイメージで売ってきており、うまく新しいニーズを掘り起こしているといえる。
まず香りは、レモンやグレープフルーツで感じた果実感とはほど遠く、ゼリー菓子(昔からあるオブラートに包まれた直方体状のやつ)
のオレンジ色のやつみたいな感じ。一口飲むと、今度は、遊園地などに置いてある昔ながらの紙コップ自販機で買ったオレンジジュースみたいな、
いかにも人工的なジュースのフレーバーが広がる。甘味がかなり強く、すっきり感はあまりない。
激安居酒屋のいったい何が入っているのかわからない、飲みすぎたら悪酔いしそうなチューハイを思わせる。
この製品が、「氷結」全体のイメージを汚し、売上を押し下げることのないように祈るばかりだ。レモン、グレープフルーツとの格差が大きすぎる。
キャラクター統一ができていない。とても残念だ。やはり、自信がないからこその「自信があります」発言か?
ところでこの製品、チューハイといいながら、焼酎ではなく、実はウオッカである。その昔、焼酎のようなボトルに入った「樹氷」というウオッカがチューハイのベース用として
売り出されてから、ウオッカを果汁で割ったものもなぜかチューハイとして認知されるようになったので、その流れからすればおかしいことではないが、
宝酒造や合同酒精や旭化成など正しい焼酎を扱ってきたメーカーからすれば、まがい物ということになるのだろうか。
2002年5月20日
No.29 タカラ 生果汁チューハイ グレープフルーツ
老舗宝酒造が満を持して、というか、"缶チューハイ・フレッシュ化戦争"に抗しきれずに発売した新型チューハイ。そのグレープフルーツ。
(宝酒造といえば、2世代ほど前の人たちにとっては、廉価版の丸瓶「寶焼酎」のイメージだろう)
缶を開ける前の予想では、焼酎の老舗らしくしっかりとした飲み応えのある、反面フレッシュ感には乏しい出来ばえではないかと思っていた。
しかし、缶を開けて香りをかいだ瞬間に、その予想はあっさりと裏切られた。実に果実味あふれ、みずみずしい香り(よく考えれば、この執拗なまでのみずみずしさは、
天然ではなく、むしろ人工香料であることを強く主張するものだ)。飲み口もクリアで、軽やかで、
それでいてしっかりとしたアルコール感もあって、非常に高い満足感が得られる。フレッシュ度は、キリン氷結と肩を並べ、飲み応えではこちらの方が優る。
チューハイとしてのトータルの完成度も、こちらの方が高いと思う。飲み込んだ後に、まるで100%グレープフルーツジュースを飲んだ後のような歯のキシキシ感さえあるのには驚いた。
老舗が本気になったらここまでできるという良い見本だろう。そう考えれば、垢抜けない缶のデザインも、許せてしまえそうな気がするから不思議だ。
が、サントリーやキリンやアサヒ等の巧妙な売り方を、少し見習った方がよいのかもしれない。せっかくクオリティーは確かなのだから。
2002年5月21日
No.30 タカラCANチューハイ あら搾り レモン
以前から出ている商品だが、まだ試していなかったので、新製品との比較のためにテイスティング。おそらく新製品と交代に、こちらは生産中止されるのではないかと思う(既に中止されているかも)が、
売れ残り在庫なのか、近所のスーパーの店頭に並んでいたので、購入。
香りは実にフレッシュだが、デパート最上階の食堂で出てくるレモンスカッシュのような、無果汁のレモンコンクを炭酸で割ったような香り。
缶入り不二家レモンスカッシュにも似ている。味わいは実にシャープで、クリアで、濁りがない。口中にしっかりとレモンフレーバーが広がり、
後味はきりっとしていて、嫌味がない。妙なアルコール感もなく、最初から最後までピュアな印象。缶に書かれていなければ、それとは気づかない程度にこっそり入っている果肉がご愛嬌。
アルコール度数7%とは思えない軽さで、チューハイが苦手な人にも受け入れられそうだ。
香りのフレッシュさは、同社新製品生果汁チューハイと同等。味わいの果実感は少し劣るが、後味はこちらのほうがクリーン。アルコール感は劣る。
私としては、いささか不覚だったが、もし先にこれを知っていたら、キリン氷結レモンで受けた衝撃もそれほど大きくなかったかもしれない。
これだけ実力のある商品、もし売り方が違えば、もっともっと売れていて良いと思う。老舗宝酒造に欠けているのは、どうやら売り方の方法論のようだ。とても残念。
2002年5月27日
No.31 キリン アラスカ
新発売の夏季限定発泡酒。商品名からも、缶のデザインからも明確なコンセプトが伝わってくる。
泡の盛り上がり方がビールっぽく、なかなかしっかりしている。香りも清々しく、発泡酒臭さはない。
口に含んだ際のインパクトが強く、グッと押してくる。それがこの製品の最大のウリと言える。後は尻すぼみで、凡庸な発泡酒の味になる。
ただ、飲み込んだ後には苦味以外何も味が残らず、爽快感がある。
同社の昨夏の限定品「常夏」よりも、こちらの方が完成度は数段上だ。姿勢がハッキリしていて潔い。
発泡酒は、下手に悪あがきや小細工などせず、こういう勝負の仕方をすべきだ。今までのキリンとは一線を画する商品と言えよう。
2002年5月28日
No.32 アサヒ スーパーサワー レモン / グレープフルーツ
アサヒの新製品。「太陽の味がする」との何とも鮮烈なキャッチコピーと共に登場した。
まずレモンの方は、缶を開けた瞬間、香りがあまり立たず、おとなしめの印象。
味は一言でいって、非常にシャープ。苦味が強い。太陽の味というより、レモンの皮の味がする。
甘ったるさはないので、ジュースみたいな缶チューハイに飽きた人には新鮮に映るだろう。
グレープフルーツは、レモンより香りが強いが、この香りは、まさにロッテガム・グレープフルーツだ。
ということは、キリン氷結・グレープフルーツと瓜二つ。
だが味わいは、氷結ほど"お子様的"ではなく、苦味が際立つ。後味も非常にすっきり。
いずれもアサヒらしいシャープ感が身上で、コーポレートイメージに実にマッチした製品といえる。
しかし、今回の売り方にしても、香りの印象にしても、ウオッカベースという点も、キリン氷結と非常にカブる。
アサヒはゴリッチュで失敗しているので、起死回生を図りたいのだろうが、これではキリンの二番煎じと
言われても仕方ない。今回ばかりは後手に回ったと言わざるを得ない。
氷結との味わいの違いをどれだけ消費者にわかってもらえるか、それによって明暗は分かれよう。
ところでこの製品、製造者はニッカウヰスキーとなっている。もしかするとこれはつなぎというか、様子見の商品で、
今後本腰を入れるとしたら、買収した旭化成又は協和発酵の焼酎部門を使って、新たなチューハイを投入してくる
のかもしれない。
2002年6月4日
No.33 サントリー 清涼感 純水仕上げ 爽やかレモン
以前からある製品だが、あらためて試してみた。
特徴をひとことで言えば、すっきりさわやか。製品名のとおりの味わいだ。
缶を開けた瞬間に立ち昇るレモンの香りは、若干人工的ながら、実にジューシー。
飲み口もすっきり、さらっとしており、嫌な甘味などは残らない。重みも広がりも何もないが、
「清涼感」という製品コンセプトは貫かれており、非常に好感が持てる。
一時期かなりCMを流していたが、なぜもっと強力に前面に出さないのか不思議だ。
主力商品のスパチューと食い合うことを恐れているのか。こういう主張の明確なものの方が、
市場受けは良いように思えるのだが。
アルコール度数が5%と、少々低めであり、これもすっきり感をつくる重要な要素だと思う。
果汁3.7%使用となっており、決して多くはないが、別にジュースを飲んでいるわけではないし、
全体としての完成度が高ければ、果汁の比率は問題ではない。
2002年6月6日
No.34 サントリー 清涼感 純水仕上げ うるおいピーチ
上記と同じシリーズのピーチチューハイ。
香りはいかにも人工香料だが、果汁も2.5%使っているとのこと。ピーチの場合、自然な桃の香りよりは、
むしろ香料の方が本物っぽかったりするので、これはこれでよい。
飲み口、広がり、後味ともシリーズのコンセプトが貫かれており、さらっと軽やか。
取りようによっては飲み応えがないとか、味が薄いとか言われそうだが、
このように敢えて薄めの味付けにするのは、近年ソフトドリンクの分野でも常套手段となっているので、
広く受け入れられるだろう。イメージ的に可愛らしい商品だが、男性にも嫌われないテイストだと思う。
2002年6月11日
No.35 サントリー スーパーチューハイ ドライ
缶に「クリアなうまさ×抜群のキレ味」と書かれているとおり従来の缶チューハイとは一線を画すテイスト。
まず香りは、柑橘系シャワーコロンのようなライトな化粧品的。したがって、果実感からはほど遠い。
一口飲んだ瞬間に、いままでと違う、と思わせる軽さ。いや、薄さと言った方がぴったりくる。
初めてノンシュガーキャンディを舐めたときのような、「キャンディはやっぱり砂糖や水飴がたっぷり使ってなくちゃ」
という非常に物足りない感じ。
後味もシャープで、口中に甘味を残さない。ではアルコール感が強いかというと、そうでもなく、どぎつい印象もない。
つまり、全体的に薄いだけ。薄さが災いして、缶のまま飲むと缶臭さが気になるほど。
「缶チューハイ総ジュース化現象」に対するアンチ・テーゼとして、エポックメイキングな存在であることは認める。
夏に向けてすっきり感は大切であるが、そもそもチューハイにドライを求める人は、そう多くないだろう。
本当のドライ好みなら、焼酎をロックにでもして飲めばよいのだから。「それは違うよ」という開発者の声も聞こえてきそうではあるが。
それにしても、この商品名から"チューハイ"を取ったら、"スーパー・ドライ"。チューハイという、この製品の何たるかを示す一般名詞をはさんでいるから、
類似商標にはならないだろうが、深層心理に訴える、いわばサブリミナル命名ではないか。いかにもサントリーのやりそうな巧みな商法。
2002年6月21日
No.36 サッポロ 樽生仕立
なかなか良い。
私が発泡酒を誉めることなどほとんどない、というのは、もう皆さんもよくご存知であろう。
けなしながらも次々と試していっているのは、ひとえに良いものを求める探究心に他ならない。
もしかすると、今度は良いかもしれない。そういう淡い期待を常に抱いている。
泡は"ちりちり、ふつふつ"で、いかにも発泡酒的。香りも極薄ミント感中心で、ビールに比べ明らかに弱い。
口に含んだ瞬間も、ああやっぱり発泡酒だなあと思わせる軽さ。だが、そこから先に、この製品の特色が現れる。
苦味がかなりのずっしり感を持ち、飲み込んだ後にも口中に苦味を残す。それによって、発泡酒臭さは半減され、
重みすら感じさせる。「飲んだ」という実感を与えてくれる。
元々深い味わいなど望むべくもない発泡酒だからこそ、何か一つ強烈に主張する個性があれば、それだけで十分アピールする。
この方法論は、発泡酒界ではかつて一世を風靡したサントリーマグナムドライで花開いたが、今回違う形でサッポロが実現してくれた。
ただ粗野なだけではない。欠点を隠しつつ別の個性を前に出し、独自の魅力をアピールする。ファッションの方法論にも似ている。
サッポロは、「ファインラガー」では少しやり方を間違えたが、今回は正攻法だ。サントリーの「炭濾過純生」といい、
各社なかなかの技術、そしてイメージ戦略。どうするアサヒ。どうするキリン。
2002年6月22日
No.37 サントリー Ad生(アドナマ)
味はどうあれ、こういう企画ものは買っておかねば。との動機だけで購入。128円なり。
色が極めて薄いのは当然のことであるが、香りは意外にも発泡酒臭くない。
もしや、と思いながら、口にした瞬間、「なんだ、やっぱり」という失望に変わる。
味わいも何もなく、これでもかというほどの穀物臭さと嫌な甘味。鼻をつまんで一気に飲み干してしまいたいほど。
「のどごし発泡酒」とのネーミングの通り、喉を通る刺激だけが勝負。
「大麦で旨くなった!広告で安くなった! この商品は協賛企業からの広告費収入を本体価格に反映させ、
いっそうお求めやすい価格を実現しました。」という。
何と比べて旨くなったのかは知らないが、確かに安くだけはなっている。缶ジュースとほとんど変わらないのだから、すごい。
でも、このクオリティなら、120円の緑茶かウーロン茶あるいは缶コーヒーのほうが、よっぽど満足感を与えてくれるというもの。
そこまでして"ただアルコールの入ったもの"を飲みたいアル中ばかりではないぞ、消費者は。
郵便局の「エコーはがき」と同じ手法だが、開き直って名前を「Ad(広告)生」とした潔さだけは認めよう。
2002年7月7日
No.38 サントリー スーパーマグナムドライ
色は当然のごとく薄いが、ビールでいえばバドワイザー程度。泡は意外と力があり、最初はこんもりと盛り上がる。
香りは穏やかで、発泡酒臭さはあまり感じない。味わいと呼べるようなものはなく、かなり水っぽい。
炭酸の刺激はそこそこ。後味に嫌な発泡酒臭さがかなり残る。
以前のマグナムドライとどこが変わったのだろう。缶に書かれた「辛口・キレ・のど撃つ刺激」というコピーも、
なんだか白々しく感じる。以前のマグナムドライがもしなければ、それなりにこれも存在感があったのだろうが、
今さら・・・といった感じを拭えない。強いて言えば、より薄くなって、毒気が抜けたマグナムドライという感じか。
"SUPER"とは、135円を超え、130円を達成したという意味のSUPERなんだろうと私は解釈する。それ以外、どんな違いがあるというのか。
「炭濾過純生」という卓越した商品があるのだから、そちらに特化したほうが得策だと思うんですがねえ。サントリーさん。
これを2本と、モルツ・スーパープレミアム1本と、どっちが良い?と聞かれたら、即座にモルツと答えます。3本対1本でも、
やはりモルツと答えます。4本対1本でも・・・。つまり、そういうことですよ。アサヒビールの仮処分申請に対して対抗策を講じているようだけれど、
この品質ではねえ・・・。
2002年8月21日
No.39 サントリー 味わい秋生 2002
もうこのような秋らしい商品が並ぶ季節になった。
このパッケージは昨年と似かよったものだが、明らかに「キリン秋味」を意識している。
いや、真似ていると言った方が良いだろう。
さて、肝心の中身だが、まず色はしっかりめで、好感が持てる。泡は発泡酒らしく妙にきめ細かい。
香りは重めで、第一印象で発泡酒臭さを感じない。よくよく嗅いでみると、気づくという程度。
味わいは、強い苦味があるものの重くはない。飲み込んだ後、鼻から吐く息には穀物臭さがある。
普通、ビールならこれほど苦味の強いものだと重みもそれに付随するものだが、
ただ表面的な苦味だけが粗暴に主張するところがこの製品の限界である。
が、発泡酒はこのように特定のキャラクターだけを前面に出す「一点豪華主義」に徹するべきだと思う。
全体的にビールらしくしようとすればするほど、ボロが出るのだから。
スカスカの発泡酒を飲みなれた輩は少々面食らうかもしれないが、このくらい粗暴なほうが、飲んでいて納得する。
2002年8月30日
No.40 サントリー アイスチューハイ レモン / グレープフルーツ
サントリーの新製品アイスチューハイである。
まず香りは、最近の爽やか系チューハイに共通したフレッシュさで、レモンもグレープフルーツもピチピチした感じ。
明らかに香料だとわかるが、それが嫌味ではない。飲み口がシャープというか薄いので、インパクトは強くない。
甘味も弱く、味わいが広がらない。レモンの方が酸がキリッとしている分、主張を感じるが、
グレープフルーツは酸もボヤケ気味。
少々後ろ向きの表現をしてしまったが、全体を通してのすっきり感はすばらしく、チューハイもここまで洗練されたか、
という感慨すらある。もちろん焼酎ではないからアルコールの臭みがないという点が大きい。「スピリッツ使用」とだけあり、
ウオッカなのか何なのか定かではない。
キリン氷結が、爽やかさと共に果汁っぽさを強調しているのに対し、こちらはひたすらすっきり感を追求している感じ。
競合しなくはないが、ある程度の住み分けはできそうだ。どちらかといえば、アサヒ・スーパーサワーに近いかもしれない。
スーパーサワーの角張ったところを丸くした感じか。
しかし、こういった酒らしくないものに対しては、ひとことで「まずい」と片付ける人が相当多いだろうと思われる。
だが、こんな酒らしくない「さらっと感」を打ち出したチューハイはめずらしく、評価に値すると思う。十分、買いである。
「酒」を求める人には決してお勧めしないが。