利酒日記〜安葡萄酒に彩られた日常〜

2001年9月


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2001年9月2日  ROUGE
DOMAINE DE CORNEILLE 1998 / COTES DE LA MALEPERE
ドメーヌ・ド・コルネイユ / コート・ド・ラ・マルペール
V.D.Q.S.

  かなり深みのある色だが、ややにごりがある。香りは豊潤で、アルコール感に満ち、黒っぽく落ち着いている。若干薬草的な甘苦い香りも。 味わいは、まず瞬間的に甘味が広がり、その後すぐに鋭い酸が押し寄せる。口に含んだまま鼻から息を抜くと、ゴムっぽい匂いがある。 タンニンは極めて滑らかで、コクはほどほど。余韻もほどほど。 少し時間を置くと、なめし皮の香りも出てきた。若干薄っぺらい感じもあるが、値段(\800程度)と比較して、極めて上質。 ボルドーのブルジョワ級と言われても、そんな気がする。
  当日記では初登場のVDQS。旅先のひなびたローカル線の駅で偶然見かけた、色白で清楚な雰囲気が漂い、背丈もスラッとした女子高生みたいな、 「こんな所にキミのような娘がいたのか」的な感動。
  wineを女性に喩えて表現するのは常套手段だが、最近の私の表現は、ちょっとマニアックすぎるだろうか。おそらく女性読者の評判は良くないんだろうな、 と思う今日この頃。
<評定:A>

2001年9月3日  BLANC
LUIGI BOSCA CHARDONNAY 1997
ルイジ・ボスカ シャルドネ
アルゼンチン、MENDOZA

  典型的な麦わら色。香りは、バター的オイリーさ、はちみつのような甘さのほか、オレンジの香りもある。 刺激は強くなく、とても品がよく、マイルドな印象。 口当たりも香りの印象と違わず丸みがあるが、酸が意外と強く、甘味は後ろに引っ込んだ感じである。 オイリーな味わいが持続し、余韻もそこそこ続く。 全体を通してクリーミーであり、かつ、酸には芯が通っており、ふくよかながらシャッキリしたワイン。 後味にはバターっぽさというか、カスタードのような風味と共に、苦味もある。\1,000にしては、実に上出来である。今月は、2本続けて惜しみなくA評価を付けた。
  このワインと同じ、アルゼンチンの有名ワイナリーであるトラピチェの同等品と比べると、こちらの方が端正でソフィスティケートされた味わいと言える。
  東京の短大を卒業後、地元にUターン就職したOL1年生みたいな、のどかな環境で少し都会の匂いをさせている21歳といった風情。
<評定:A>

2001年9月8日  ROUGE
TOURAINE 1998 CUVEE LES DRAGEONNIERES / J. M. MONMOUSSEAU
トゥレーヌ キュヴェ・レ・ドラジェオニエール / J. M. モンムソー
VAL DE LOIRE地方、TOURAINE地区、AC:TOURAINE

JMM_toureine   全体に青みがかった色で、エッジは透明。実に若々しい。ガメイ的な赤ベリー系の甘酸っぱい香りが中心で、 若干シナモンのような香りも。酸のアタックが強めで、甘味はほどほど。タンニンはまろやかで刺激性はない。 最初から最後までガメイっぽさが際立っているので、ブラインドで試したら、迷わずボジョレと言ってしまいそうである。 実は購入時に試飲をしたのだが、その時の印象は、マルベック的な絵の具のような香りが強く、これほどフレッシュさは感じなかった。 きっとあのボトルは、抜栓してからかなり時間が経っていたのだろう。
  ところでこのワイン、裏ラベルに丁寧な記述があり、興味をそそられる(写真参照)。
  まず、使用ぶどう品種については、次のように書かれている。
  Assemblage de trois grands cepages nobles de la Toureine: Gamay Noir a jus blanc, Cabernet franc et Cot (ou Malbec dans le Bordelais).  〜ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン、カベルネ・フラン、コ(マルベック・ダン・ル・ボルドレ)という この地方を代表する高貴品種3種のアッサンブラージュである。
  また、"Mis en bouteille le 14 Mars 2000"とあり、壜詰め日が2000年の3月14日であることと、 このボトルは全17,000のうちの14,065番である旨の表示もある。
  作り手の気合の入ったワインだということはわかるが、そんなに力を入れなくても・・・というのが正直な感想。 まあ\1,200だったことを考えれば、上出来だが。
<評定:C+>

2001年9月10日  BLANC
VOUVRAY 1999 / MICHEL ARMAND
ヴーヴレ / ミッシェル・アルマン
VAL DE LOIRE地方、TOUREINE地区、AC:VOUVRAY

  色はほとんどなく、日本酒のよう。まず、適度に雨にぬれた芝生のような、さわやかな緑の香りと、アクリルというか、石油っぽさがある。 その背後に、グレープフルーツの香りも若干ある。口当たりは意外にも甘味が目立っており、しかし、それ以上に酸が強い。まるで甘夏のようなイメージである。 はちみつ的な、ほのかな甘味が心地よく持続する。後にはかすかに苦味もある。
  購入価格\790にしては、素晴らしいクオリティ。決して高級感はないが、素性がよく、適度な優美さも持っている。
  親の七光りで子役の頃からTVに出ているが、 年頃を迎えて一人前に艶っぽさなんか出てきた若い女優のようだ。一応きれいにまとまっているので、文句の付けようがない。 でも、どこまでが本当? どこからが虚飾? って感じ。
<評定:A+>

2001年9月15日  BLANC
TOURAINE 1999 CEPAGE SAUVIGNON / JUSTIN MONMOUSSEAU
トゥレーヌ セパージュ・ソーヴィニヨン / ジュスタン・モンムソー
VAL DE LOIRE地方、TOUREINE地区、AC:TOURAINE

  色はほとんどなく、日本酒のよう。黄色い花のようなやさしい香りと、青草の香りが強い。 口当たりは、酸のアタックが強く、すぐその後に甘味が広がり、ハーモニーはなかなか。 ほの甘い余韻が適度に持続。細かな気泡があり、かすかにぴりぴりと刺激を感じる。 品種の特長はよく出ているものの、最後のキレが今ひとつで、少しボケたような、凡庸な印象を残す。
  一般的な1,000円ワインより実力はあるが、1,500円であったことを考えると、トントンだろう。
<評定:C>

2001年9月18日  SPARKLING APPLE WINE
NIKKA CIDRE SWEET
ニッカ シードル・スウィート りんご100%
日本

cidre sweet   安ワイン愛好者にとって、月に1度ないしは数ヶ月に一度、どうしても避けられない苦悩がやってくる。「何を飲みながらカレーライスを食べるべきか」 という苦悩である。それに対する答えは、その時の気候などによって、まちまちである。 渋味が強く、粗暴なタイプの安赤ワインであったり、カヴァのようなすっきり系安スパークリングであったり、 またある時はビールであったり、麦茶であったりする。そのほとんどをもう既に何度か繰り返してしまっているので、 今回はどうしようと悩みながら行き着いた今日の結論が、このチョイスである。
  純白で実にきめ細かな泡(form)が勢いよくフワーッと盛り上がり、持続。注いだフルートグラスの底、側壁を問わず、 全面から大きめの気泡(bubble)が多く出て、こちらもかなり持続。 りんご以外の香りを探すと、かすかにイグサというか畳表のような香りを感じる。香りのイメージを色で表現すれば、 緑と茶色の中間。中心となるりんご香は、混濁タイプのアップルジュースのような鉄分の多そうな感じ。 味わいは、甘く、優しく、炭酸も穏やか。意識せず軽い気持ちで飲めば、まるでジュースのようだが、 泡の様子や、しっかりとした天然の果実香は、クオリティの高さを物語る。
  この製品、かなり以前から好きだったのだが、てっきり後から炭酸を注入したものだと思っていた。 ところが、懇意にしているワインアドバイザーのお話では、シャンパーニュのように発酵過程で発生した炭酸ガスを封じ込めたものらしい。 それを聞いて、益々いとおしく感じるようになった。
  ところで、ニッカという社名は、その前身が「日本果汁」であったからだという事実(これも教わった話)を知る人はあまりいないだろう。 そのうち、この社名もなくなってしまうんだろうか(アサヒビールに完全に統合されて)。ぜひブランド名として残して欲しい。
  また、この仏語CIDREが、サイダーの語源だということは、多くの人が知っている常識、かな?
  200ml、168円にて購入。姉妹品のDRYも買ったので、近日中に飲もう。
<評定:B>

2001年9月19日  BLANC
MONTAGNY 1996 / BOUCHARD AINE & FILS
モンタニィ / ブシャール・エィネ・エ・フィス
BOURGOGNE地方、COTES CHALONNAISE地区、AC:MONTAGNY

  色はやや黄色みが強く、パイン水といった感じ。ビニールホースかチューブの中の空気を吸ったような匂いが強く、 日陰の湿った土+草のような生臭い緑の香りもある。その蔭にナッツのような香りも潜む。 口当たりは、酸が極めて強く、甘味はほとんどない。ふくらみもなく、ジメジメした味わいが続く。 後味もすっきりしない。
  完全に劣化しているとも決め難いが、限りなくグレーな印象。\1,000で入手したが、やはり安ブルゴーニュには 失敗も多いという見本のようだ。
  このAOCは、補糖せずアルコール度数が11.5%以上あればすべて1er CRUを名乗れるという変り種であり、 以前にその1級を体験したこともある(当日記には登場していない)が、その時の印象では、さすがにシャロネーズらしく厚みのある ワインだったと記憶している。それに比べると、今回のは明らかに魂が抜けたような感じだ。
<評定:E>

2001年9月20日  ROUGE
CHATEAU COUR BRUMAGE 1996 / MEDOC
シャトー・クール・ブリュマージュ / メドック
BORDEAUX地方、MEDOC地区、AC:MEDOC

  色はしっかりしたガーネットで、エッジは透明からオレンジへのきれいなグラデーション。黒豆や栗の渋皮のような香りとともに、甘苦系スパイスの香り。 セメダイン的なツンとした匂いも立つ。味わいは、まず酸のアタックが強く、甘味はほとんど感じない。口中で広がったあと、粉っぽい余韻を残す。 タンニンがかなり強く、唇の裏側にまとわりつく感じ。全体としてのまとまりは、今一つであるものの、決して粗暴な印象はなく、 もっと熟成させれば柔かみが出てくるであろうことを予感させる。
  いつも期待と不安が半々に入り混じる1,000円メドック。今回は、当たりである。焼鳥(タレ焼き)に合わせたが、最もマッチしたのが 砂肝(関西では、ズリという)に七味唐辛子を振ったものであった。一般的には、砂肝にはローヌを合わせたいところだが、 今日のMEDOCはかなりスパイシーな部類のため、ぴったりだった。
<評定:B>

2001年9月22日  BLANC
HICKORY RIDGE CHARDONNAY 2000 / MOLDOVA
ヒッコリー・リッジ シャルドネ
モルドヴァ

  今回めずらしくネットでwineを購入した。関西のスーパーマーケットではピカイチのいかりスーパー 専属ソムリエ氏のセレクションで、しかもお買い得デイリーワインばかりを6本揃えて\5,000という、当サイトのためにあるようなラインナップ。 つまり、これはもう買うしかないでしょうという商品。今日届いたので、 早速1本目を開けてみた。聞き慣れない「モルドヴァ」産シャルドネである。
  色は淡く、甘口で濃いめの日本酒のよう。香りは、レモンとバナナの混合というか、少しシンナー的刺激の混じった香りと、ライチっぽさも若干ある。 味わいは、丸っこい酸とほどよい甘味のバランスが良く、言うなれば真ん中の充実した味。余韻は長くはないが、きれいに消えてゆき、 ペパーミントのような爽やかな後口。飲み飽きず、グラスが進む。決して飲み応えがあるタイプとは言えないが、 この清々しさと果実味あふれる味わいで、\890とは驚きである。まずは大正解と言える1本。
<評定:B>

2001年9月24日  SPARKLING APPLE WINE
NIKKA CIDRE DRY
ニッカ シードル・ドライ りんご100%
日本

cidre dry   先日に続き、シードルの2本目。
  泡の感じはスウィートと同様で、きめ細かく、かなり持続する。かすかに甘い香りは、バナナのようでもあり、 マスカットのようでもある。いわば、モスカート・ダスティのような香りだ。 口当たりは柔らかいが、甘味は冗長ではなく、 引き締まった味わい。酸とのバランスがとてもよい。キレもよく、後味はすっきりしており、先日のスウィートと同様、 混濁タイプのアップルジュースのような鉄分の多そうなりんご香がほのかに残る。
  こうして改めて冷静にテイスティングしてみると、DRYというほど辛口ではないが、この酸と甘味の絶妙なバランスは、 決して素人ダマシの飲み物ではないことがわかる。
  200ml、168円。すばらしいコスト・パフォーマンスと言える。
<評定:A−>



2001年9月25日  ROUGE
SANGIOVESE DAUNIA 2000 / LARINUM
サンジョヴェーゼ・ダウニア / ラリナム
イタリア、IGT

  色はとにかく青い。まさに青紫色で、しかも濃い。 香りは深く、紫の花とともに、タバコとヤキイモの入り混じったような香りと、新建材のような木とニスの混合的匂いも感じる。 マロングラッセのようでもある。 とにかく、有無を言わさずサンジョヴェーゼ!といった感じ。 味わいは甘味がしっかりとあり、若いが、パワフル。タンニンはとてもこなれていて、ビロード的。 若いのに決して粗暴ではなく、なめらかなのに余韻が深い。
  6本5,000円で買ったうちの2本目。1本目に引き続き、驚くべきコスト・パフォーマンス。 これで\890とは、信じられない。
  今日は中華メニューで、「麻婆豆腐」に合わせたが、文句なく融合し、相乗効果で深い味わいを生んだ。 久々、これぞ「マリアージュ」と言える組み合わせ。
<評定:A+>

2001年9月29日  ROUGE
TORTOISE CREEK LES AMOUREUX 2000 MERLOT CABERNET/ VIN DE PAYS D'OC
トートワーズ・クリーク レ・ザムルー メルロー・カベルネ / ヴァン・ド・ペイ・ドック
VIN DE PAYS

  6本購入したうちの3本目。今度は、ヴァン・ド・ペイの赤である。
  色は深いガーネット。香りはとてもスパイシーで、ピーマンのような緑の香りがあり、 色と香りの印象だけでは、まったく何のワインか想像もつかない感じ。アルコール感が豊かで、 コニャックのような芳醇さがある。 口当たりは重厚で、酸もタンニンも力強く、飲み応え充分。緑っぽい余韻が続く。 甘味は適度なので、冗長さはない。厚みと端正さが同居しており、得がたい味わい。 ボルドーとは明らかに違うが、一般的な南仏のイメージでもない。
  これは、1本の価格が\790とのことだが、特筆すべき個性である。
<評定:A>


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