利酒日記〜安葡萄酒に彩られた日常〜

2001年11月


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2001年11月1日  BLANC
CHATEAU MARTINON 2000 / ENTRE-DEUX-MERS
シャトー・マルティノン / アントゥル・ドゥー・メール
BORDEAUX地方、ENTRE-DEUX-MERS地区、AC:ENTRE-DEUX-MERS

 今まであまり良い印象のなかったAOC。大抵が薄っぺらく、酸が鋭いだけで味わいの乏しいものが多かった。 ふくらみのあるタイプもないことはないが、成功確率は低いというイメージを持っている。さて、今回はどうだろう。
 色は淡いレモンイエロー。香りは、レモン的で尖った柑橘香、ビニールのような人工的な匂い、深緑色の葉のような香り等がある。 ロウのような、あるいはワックスのような匂いも感じられる。 口当たりは意外にも丸く、ふくよかで、甘味すら感じる。但し、酸のキレは当然よく、シャープな味わい。 口中でふくらみがある一方で、喉には鋭い酸が刺す。後味はなめらか。緑の葉と、ムスクのような動物香が交じり合った余韻が程よく持続。
 外見はやわらかくフェミニンな感じなのに、態度は少しお高くとまってツンとしている美女。その分裂具合が魅力の「半分大人」なワイン。
<評定:B>

2001年11月3日  ROUGE
CHATEAU DE BEAULIEU 1996 / COTES DU MARMANDAIS
シャトー・ド・ボーリュー / コート・デュ・マルマンデ
SUD-OUEST地方、COTES DU MARMANDAIS地区、AC:COTES DU MARMANDAIS

 このワインとは関係ない話だが、今日、自宅のすぐ近くにある大手ワイン輸入会社の試飲会に行ってきた。 最初にリースリングとミュラー・トゥルガウのカビネットを飲んだ後、ガヴィ・ディ・ガヴィが注がれようとしたので、 「この順番だとガヴィの味なんかわからないのでは?」と異議を申し立てると、係のお兄さんは、 そそくさと口すすぎ用のミネラルウォーターを持ってきてくれた。
 サンジュリアンのブルジョワ級が端正でよかったが、 「多分3,000円台って言うと思うけど、2,000円なら買いなんだけどなあ」と言うと、苦笑しながら3,400円ですとの返事。
 オーストラリアのシラーズが、パワフルな樽香プンプンで、独特の魅力満載だったので、「これ1,500円なら大喜びで2本買います」 と言ったら、「残念ながら、その倍です」と。
 決して場を荒らしに行ったわけではないけれど、二度と来て欲しくない客だったろうなあ。何せ、言いたいことだけ言って、 値段に見合うものがないからと1本も買わずに帰ってきたのだから。唯一、同行者にだけは、「参考になった」と感謝されたけど。

 閑話休題。今日のワインを。
 このコート・デュ・マルマンデというAOC、当日記初登場であると共に、なんと私自身初体験である。
 色は深みのあるルビー色で、やや褐色がかっている。足は長い。コニャックのような芳醇さと、血のような鉄っぽさが共存。 樽香も豊か。 香りの印象では、ローヌのパワフルなワインに近い。 口当たりは、酸のアタックがキュートで、適度に尖った飲み口。但し、その後のふくらみが豊かで、丸い味わい。 甘味もほんのりと広がる。ヴァニラっぽい余韻が適度に持続。タンニンはやや粗いが、果実味豊かな味わいの邪魔をすることなく、 良いバランスを保っている。
 スポーティな格好で、ボーイッシュ。野球帽のような帽子をかぶって活動的な印象だったが、 帽子を取ったとたんに、長い黒髪がはらっと風に揺れ、大人の女を感じさせる27歳。そんな感じのワインだ。
 入手価格\1,290。「売らんかな」態度ミエミエの試飲会で供されるワインよりも、やはりWEBマスターは、 こういったマイナーなものを自力で探してくることに喜びを覚えるのである。
<評定:A>

2001年11月5日  BLANC
VIN D'ALSACE 1999 RIESLING / DOMAINE AUTHER
ヴァン・ダルザス リースリング / ドメーヌ・オーテール
ALSACE地方、AC:ALSACE

 風邪で声が出なくなった。最近ほとんど休みが取れていないのだから無理もない。電話が掛かってくると本当に困る。 こんな状態でありながら、私はいつも通りwineを開ける。
 色はやや緑がかったレモンイエロー。意外にも濃い。香りは、まずレモン的柑橘香が強く、 リースリングらしいいわゆる石油香は後ろに引っ込んでいるが、グラスを回すと薬品っぽさが少し出てくる。 味わいは、酸の切り込みが鋭く、キレは抜群。その後に緑っぽいふくらみがあり、かすかに甘味も感じられ、尖っただけの味ではない。 後味も青りんご的で清々しい。新緑と色とりどりの花の香りが流れる車窓から吸う空気のようなワイン。
 いつもは赤を開けたくなる鶏の唐揚にあえてこれを合わせた。レモンを搾る代わりという意図だが、 見事に成功した。脂っこさが中和され、口中をスキッとさせてくれた。ちなみにラベルには、おすすめ料理として、 「豚肉のポトフ」「豚の冷しゃぶ」「ハムやソーセージの盛り合わせ」「海老焼売」「春巻き」「小龍包」(点心類) 「天ぷら」「ポテトグラタン」「お好み焼き」「クリームコロッケ」などが挙げられている。皆おいしそうだ。 私の今日の選択は、「天ぷら」に合わせたのに近いだろう。しかし「ポテトグラタン」や「クリームコロッケ」というのは、ワインの酸とホワイトクリームが あまりなじまないような感じもするが、酸の後の甘味が調和を生むのだろうか?試してみたい。
 いつもおなじみ某店の1000円均一コーナーで入手。上代もそれほど変わらないと思うが、概ね価格以上のクオリティといえる。
<評定:C+>

2001年11月7日  BLANC
COTES-DU-RHONE 1998 / E. GUIGAL
コート・デュ・ローヌ / E. ギガル
COTES DU RHONE地方、AC:COTES DU RHONE

Cotes-du-Rhone Guigal  定番ギガルのACローヌ。このワイン今までにも何度か飲んだことはあるが、なんと当日記にはまだ登場していなかった。 ということで、初心に帰って。
 色は深みのある麦わら色で、美しい輝きを持つ。香りは、一瞬傷んでいるのか?と思わせるコルクのような、きな粉のような、 おしろいのような、お婆ちゃんの三面鏡を開けた時のような、粉っぽい香りがストレートにやってくる。普通の樽のヴァニラ香ともちょっと違う。グラスを回すと、 それはクルミかカシューナッツのような少し脂っぽさを伴う香ばしさ に変化する。 味わいは、最初やわらかな甘味がじんわりと広がり、その後、苦味を伴った酸が引き締めにかかる。とても厚みがあり、 口中に圧倒的な存在感を主張する。後味も、酸と甘味のバランスがよく、余韻も長め。
 好みがはっきりと分かれるかもしれない。それだけ個性が強いということだが、この重厚さは、さすがと言えよう。 入手価格は\1,400。以前はもう少し高かったような気もする。おなじみのエチケット(ラベル)なので、目にしたことのある方も多いだろう。
 歌手にたとえれば、若いが実力十分で存在感のあるMisiaか小柳ゆきのようでもあり、大衆におもねることをせず、ひたすら玄人好み路線を貫く 小野リサのようなワインといったほうが良いか。
<評定:B>

2001年11月11日  ROUGE
CHATEAU BALLAN-LARQUETTE 1999 / BORDEAUX
シャトー・バラン・ラルケット / ボルドー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX

 記念すべき「ポッキーの日」のワインはこれ(って別に何の関係もないが)。
 色は濃くはなく、ザクロっぽい感じ。香りに甘酸っぱさがあり、ボルドーという印象ではない。 むしろブルゴーニュ南部のガメイのような感じ。時間が経つとなめし皮の香りも出てくる。 口に含むと意外とまろやかでふわっと甘みが広がる。厚みはない。タンニンが少し粗く、唇の裏にひっかかる感じ。 酸は穏やか。さらっと飲み干せてしまい、余韻も短かめ。
 ブラインドで試したら、絶対にボルドーとは言わないだろう。しかし、この軽やかでフルーティな個性は、 評価してよい。値段に見合ったクオリティ。
<評定:C>

2001年11月12日  ROSE
KOBE WINE 2001 新酒 (ROSE) / (財)神戸市みのりの公社
神戸ワイン 新酒(ロゼ) やや甘口 / 製造地:神戸市立農業公園 神戸ワイナリー
日本

Kobe新酒ロゼ  寒い季節を迎え、クリスマスが近づくと、どういうわけか甘〜い系のワインに手が伸びる。 クリスマスケーキに貴腐ワインという魅惑の組み合わせが自然と思い出される。 そんなことを思っていたら、昨日読者の方からチリMONTESのLATE HARVESTが美味だとのメールをいただいた。 おいしそうだ。12月に入ったら本格的に極甘系に行ってみようかなどと期待は膨らむ。
 今日はその前哨戦で、国産ロゼの新酒を。
 色はクランベリージュースあるいはイチゴシロップのような深みのある美しい赤(黒っぽいピンク色とも言える)。 香りは、引き締まったタンニンを彷彿とさせるエチレン系の化学物質っぽい香りと、青臭みのないトマトの香り。 味わいは予想以上にシャープで、口いっぱいに甘酸っぱさが広がるのと同時に、しっかりしたタンニンを感じる。 みずみずしい余韻がふんわりと残る。
 カベルネ、メルロー等使用とあり、納得。ただ甘いだけのロゼではなく、酸と渋味が充実し、しっかりした味わいはさすが。 これで\960は、ちょっとした感動である。いつもながら神戸ワインは期待を裏切らない。
 原料ブドウ生産地:神戸市西区押部谷・平野町、北区大沢町。ブドウ畑:303ha、植栽本数8万本。 また、酸化防止剤(亜硫酸塩)使用とある。国産というと、健康志向で無知な日本人消費者に媚びたような「無添加ワイン」が 多い中、そのようなまやかしに敢然と立ち向かう正統派ワイン。
 ※亜硫酸塩が本来ワイン醸造に不可欠で、かつ、人体に無害であることを 知らない人が多すぎるのだ。
<評定:A>

2001年11月15日  ROUGE
BEAUJOLAIS NOUVEAU 2001 / GEORGES DUBOEUF
ボージョレ・ヌーヴォー / ジョルジュ・デュブッフ
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS

DUBOEUF NOUVEAU 2001  毎年解禁日には、テレビのニュースでも必ず紹介される。朝からデパートのワイン売場で「どうぞお味見ください」と振舞われている 所にカメラが潜入し、普段、ビールと発泡酒の違いもよくわからないようなフツウの主婦(50代)に「どうですか?」とマイクを向けると、 「今年はおいしいですね!」などとのたまっている。そんな光景を見ると、思わずスリッパで頭の後ろからペシッとやってやりたくなるのは、 私だけではあるまい。
 毎年、「高いなあ」と思いながら、それでもお祭りだからと買っている私だが、どうせお祭りならば、贅沢ついでに、飲み比べをしてしまおう、 と3種類買ってきた。というわけで、今日から順次登場する。まるで、カルピスをいつもの2倍の濃さに作って飲むような贅沢ではないか!
 まず1本目は、最もよく売れているであろうデュブッフ氏のヌーヴォー。金持ちワイン通に背を向け、 一般庶民のお役に立ちたいと願う当サイトとしては、まず押さえておくべきワインだろう。

 色は当然青みがかっているものの、かなり深く、濃い。いちごっぽい香りよりも、プラム的な凝縮感のある果実香が強く、 当然、ヌーヴォーらしいセメダイン香(良く言えばバナナ香)もある。口当たりも引き締まっており、ぐっと押してくる感じがある。 タンニンが力強く、まとわりつく感じすらある。酸と甘味のふくよかさのバランスがよい。
 今年は出来が良い、という話をずっと聞かされていたので、ニュースの主婦のような、ありきたりなコメントだけは避けようと思っていたが、 確かに飲み応えがあって、すばらしい。しかし、今まで一度も「今年は出来が悪い」という前評判は、聞いたことがない。当たり前だが、宣伝とはそういうもの。

 毎年、特にバッチリと合う食事があまり思いつかないのだが、考えようによっては、どんな食事にも気軽に添えることができて、 しかも邪魔をしない。ジーンズとか紺のブレザーみたいに着回しのきくワインなのだ。今日は、焼鳥と共に楽しんだ(特に塩焼きがバッチリ)。
 ハーフボトル\1,350にて入手。飛行機代と税金を抜いたらいくらなんだろう、という野暮なことは考えないようにしよう。十分満足したんだから。
 なお、BEAUJOLAISは一般に「ボジョレー」と呼ばれることが多いが、当サイトでは、以前から原語の読みに近い「ボージョレ」を採用している。
<評定:AA>

2001年11月16日  ROUGE
BEAUJOLAIS NOUVEAU 2001 / ALBERT BICHOT
ボージョレ・ヌーヴォー / アルベール・ビショー
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS

BICHOT NOUVEAU 2001  クロード・モネの絵に飾られたとびきり美しいボトル。私が今年、真っ先に手にとったのがこれで、 その際には中身の出来ばえなどには思いは至らず、見た瞬間に(正確には、今年のビショーはモネらしいという話を聞いたときから既に) 購入を決めていた。同じようにこのエチケットの魅力だけで購入した人が、おそらく世界中に数千人はいたのではないか、と思う。 そういえば私は去年、ゴッホの絵のついたクルーズを買っている。所詮、記念のようなものなのだから、という心理が毎年働くようだ。
 さて、肝心の中身である。
 今年は良い良いと聞かされていたので、もしこれを昨日飲んでいたら、「なんだ去年とあんまり変わんないじゃん」と思っていたかも。
 「ここ10年で最良の出来ばえ、とのコメントがデュブッフ氏から届いている」という報道を聞いたが、確かに昨日試したとおり、氏のヌーヴォーは素晴らしかった。
 このビショーのものは、よく言えば実にヌーヴォーらしく初々しい。 色は典型的な青紫で、淡く若々しい。いちご系の甘やかな香りが全体を包み、刺激は弱く、ほんわかムード。 口当たりはぴちぴちした酸に、やさしい甘味。それでも、強めのタンニンが引き締めにかかる所が昨年等とは少し違い、これが今年の特徴か。 飲み干した後の充実感は、デュブッフに2歩も3歩も譲る感じ。
 ワインが得意でない人は、こういうタイプの方がおいしいと思うだろう。もちろん軽やかなのがいけないなどというつもりは毛頭ない。 軽やかさこそが、この新酒の命でもあるのだ。個性ある軽やかさであれば、言うことはないのだが。 初々しいだけなら、ルックスも歌唱力もそこそこで若さだけが取り柄の駆け出しアイドルみたいではないか。
 ところで今日は、合わせた食事がなんとステーキだった。昨日書いたように、ボージョレ・ヌーヴォーは着回しのきく服のようなものだが、 それでも相手が牛ステーキだと、まるで紺ブレ(死語!)で結婚式に出席したみたいだ。おかしいことはないが、決して賢者の選択ではない。
 購入価格は、ハーフボトルで\1,350。コストパフォーマンスをシビアに評価すれば、C+とも思うが、ヌーヴォーらしいという点と、 エチケットも含め総合的に評価して。
<評定:B>

2001年11月17日  ROUGE
BEAUJOLAIS VILLAGES NOUVEAU 2001 "UNFORGETTABLE" / GILES DE LAMOIRE
ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー "アンフォゲッタブル" / ジル・ド・ラモワール
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS VILLAGES

LAMOIRE VILLAGES NOUVEAU 2001  3連戦最終日はヴィラージュ・ヌーヴォー。
 エチケットのデザインが他のヌーヴォーには見られないほど地味で、それが逆におシャレである。
 色合いはヌーヴォーらしく若々しい青紫。香りは、フレッシュさよりもアルコールの芳醇さが際立ち、落ち着いた印象。 果実っぽさよりも紫の花のような香りが強い。口に含んだ最初の瞬間は、ほんのりとした甘さとみずみずしい酸が広がるが、 骨格がしっかりとしており、飲み応えがある。タンニンもしっかりと感じ、それでいて粗暴ではない。 やはりヴィラージュは、ちゃんと「赤ワイン」を感じさせてくれる。
 今日の献立は「鯛ちり」で、どう考えても白ワインがベストだろうと思うが、あえて挑戦した。 もうこうなるとビジネススーツで葬儀に参列するような、女性ならばボディコン・スーツで子供の入学式に出席するような、 浮かないことだけを願う、といったシチュエーション。しかし、心配したほどではなく、控えめのピチピチ感と適度な深みが、 鍋物にアクセントを添えてくれた。意外な発見である。
 フルボトル\1,980にて入手。一昨日と昨日のワインよりも実は安いのだが、一番充実感があった。 反面、新酒としての鮮烈さには欠けるので、ヌーヴォーらしいものを求める向きにはお奨めしない。 静かな実力派と言っておこう。unforgettable(忘れられない)かといえば、むしろ反対で、実力は確かなのに立ち回りが下手なため プロダクションに売ってもらえずパッとしない歌手のようだ。万人にちやほやされなくたって、わかってくれる人に評価されれば、それでいいんです。
<評定:A+>

2001年11月18日  BLANC
LE VIGNERON ARDECHOIS CHARDONNAY 2000 / VIN DE PAYS DES COMTES RHODANIENS
ル・ヴィニェロン・アルデショワ シャルドネ / ヴァン・ド・ペイ・デ・コント・ロダニアン
VIN DE PAYS

 色は淡いイエローグリーン。すっきり系の味が予想される。 華やかで可憐な黄色い花の香りに、ヘーゼルナッツのような香ばしさと、適度な樽香。 時間が経つと、ヴァニラ香が更に開いてヨーグルトのようなクリーミーさに。 口当たりはやわらかく、甘味がふくよかで、酸はひかえめ。かすかな苦味を伴う。 なめらかで、かつ、香ばしい余韻が長く続く。
 ぎっしり詰まった味わい。入手価格\890にしてこの個性、この充実度はすばらしい。 口中での広がりが若干物足りないが、そこまで求めるのは酷だろう。
<評定:A>

2001年11月19日  ROUGE
MOULIN-A-VENT "DOMAINE DE LA BRUYERE" 1997 / PIERRE ANDRE
ムーラン・ア・ヴァン ドメーヌ・ド・ラ・ブリュイエール / ピエール・アンドレ
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:MOULIN-A-VENT (CRU BEAUJOLAIS)

 色は濃くはないが、かなり褐色がかっている。但し、エッジは透明。 土の香りの中に火薬のような匂いと落ち着いた樽香。芳醇なアルコール感。 口当たりは酸がかなりシャープで、甘味はない。やや薄っぺらい印象だが、タンニンはそこそこ力がある。 火薬っぽさは時間と共にイオウのような匂いに変わる。
 頭でっかちで足腰がしっかりしていないといった感じもあるが、この重みを伴わないエレガントな酸が特徴と言える。
 ヌーヴォーのあとはクリュ・ボージョレ。同じぶどうから作られているとは思えないほど表情が違う。
 身のこなしがしなやか。スレンダーなルックスとクールな表情が印象的な30歳。このまま可憐さを失わずに年を重ねてゆきそうな美女タイプのワイン。
 なお、MOULIN-A-VENTを、"ムーラン・ナ・ヴァン"と表記しているのをよく見かけるが、"ムーラン・ア・ヴァン"とリエゾンしないのが正しい読みだったと思う。
<評定:A>

2001年11月20日  BLANC
COTES DU VENTOUX "VIEUX CLOCHER" 2000 / MAISON ARNOUX & FILS
コート・デュ・ヴァントゥー "ヴュー・クロシェ" / メゾン・アルヌー・エ・フィス
COTES DU RHONE地方(南部)、COTES DU VENTOUX地区、AC:COTES DU VENTOUX

 イエローグリーンにややオレンジを混ぜたような色。山吹色を限りなく薄くしたようだとも言える。 白い花の香りに若干ライチのような甘い香りが加わる。ビニールっぽい人工的な香りも。 口当たりはやわらかく、華やかな甘酸っぱさが広がるが、線が細く、重みもない。 1本筋の通った酸だけが最後まで残る。
 導入部が優雅なだけに、尻すぼみの印象。トータルでみれば、入手価格\890を上回る満足度はある。
 化粧は上手で美しく、大人びた印象を与えるものの未だ人間的な厚みには欠ける女子大生19歳といった感じのワイン。
<評定:C+>

2001年11月21日  ROUGE
CHATEAU DE CAMPUGET 2000 / COSTIERES DE NIMES
シャトー・ド・カンピュジェ / コスティエール・ド・ニーム
LANGUEDOC-ROUSSILLION地方、COSTIERS DE NIMES地区、AC:COSTIERS DE NIMES

 色は若干青みがかっているものの深く濃く、南を感じさせる色調。足も長く、アルコール度数の高さを実感させる(13度)。  豊かなアルコール感。中身がぎっしり詰まったような甘苦い香り。言い換えれば、しょうゆで煮しめたような黒っぽい香り。 口に含んだ瞬間からずっしりとした重みがあり、ややぼけた感じの甘味が広がる。タンニンが強烈で、口の中全体に引っ掛かってくる感じ。 「重い赤ワインを飲んだ」という充実度のある粉っぽい後味。
 これでもか、というほど南のワインであることを実感させられるが、ただそれだけ。 入手価格\1,000に対して、少し物足りない。焼肉を食べながらだったので、ほぼ目的は達したのだが。
 気づけば15日から7日間連続でボトルを開けている。恐らく当日記始まって以来のハイペースだが、家庭不和で、感情のはけ口としてのヤケ酒、ではないのでご心配なく。 wineは幸せな時に飲むお酒です。
<評定:C−>

2001年11月25日  ROUGE
CHATEAU LES GRAUZILS 1997 / CAHORS
シャトー・レ・グロージル / カオール
SUD-OUEST地方、CAHORS地区、AC:CAHORS

 色は、これ以上のものはないのでは、と言えるほど深く、黒い。グラスの底が見えないほどである。 黒コショウのようなスパイシーさと若干の動物臭。黒っぽいベリー系の甘酸っぱさもある。味わいは重く、濃く、 口中いっぱいに酸と渋味が広がる。血のような鉄っぽさもある。極めて粗暴なタンニンがまとわりつき、そのパワーに圧倒される。
 "CONCOUR DES GRANDS VINS DE FRANCE 2000 MACON MEDAILLE D'OR"、"マコンワインコンテスト'00ゴールドメダル受賞"と 仏日2ヶ国語で書かれた金のラベルが貼ってあり、否が応でも目に入る。
 鳴り物入りでデビューした外務大臣みたいに、アクの強いところが売り。この強烈な個性は高く評価されてよい。 しかし何者をも寄せ付けないこのパワフルさには、好き嫌いがはっきりと分かれるだろう。
 カオールらしいといえば実にカオールらしいが、エレガントさも少しは欲しいところ。
<評定:C+>

2001年11月26日  BLANC
ECHEVERRIA UNWODDED CHARDONNAY 1998
エチェヴェリア アンウッディド・シャルドネ
チリ、CURICO VALLEY、MORINA

 色は濃いめのレモンイエロー。パイナップルのような甘酸っぱいトロピカルな香りに、レモン的柑橘香のアクセントと、 若干のカラメル香。時間が経つと、貴腐ワインのようなアプリコット香も出てくる。 味わいは、たっぷりとした甘味の蔭に、かすかな苦味。ふくらみが豊かで、余韻もミルキー。 酸はあくまでもマイルド。
 いかにもチリの廉価版シャルドネだが、"UNWOODED"とわざわざ銘打っているように、ボディの厚みに比べ、 すっきりした後口が魅力。樽熟成していないのにもかかわらず、ヨーグルト的風味があるのはさすが、チリらしい。 ルックスは肉感的でありながら男勝りの性格が魅力な山口智子的ワインだ。入手価格\940にして、稀有な存在と言えよう。
 なお、本日、「評価基準」を当利酒日記トップページに改めて記した。内容は次のとおりであるが、参考にしてほしい。
評 価 基 準

A=特質すべき個性。価格に比し、極めて優れたクオリティ。
B=非凡な特徴があり、価格を上回るクオリティ。
C=概ね価格に見合ったクオリティ。
D=凡庸で特徴に欠ける。価格に比し、やや劣る。
E=価格に比し、著しく劣るクオリティ。

 なお、各ランクよりやや上回るものに+、やや下回るものに−を付けている。例えばC+とは、 若干価格を上回るクオリティを表す。また、通常の評価枠を超えた素晴らしいものにはAAランクを付与している。

<評定:B>

2001年11月30日  BLANC
BOURGOGNE CHARDONNAY 2000 / ROUX PERE & FILS
ブルゴーニュ シャルドネ / ルー・ペール・エ・フィス
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE

 ほとんど色がなく、日本酒的。香りは、レモン、ライム等のシャープな柑橘系に、ポリエチレン袋のような化学物質的香り。 味わいも香りの印象と寸分違わず、酸の切り込みが鋭い。ふくらみはない。後味にかなり苦味を感じるが、キレは抜群。 シャープさを楽しむべきワイン。入手価格\1,190で損もなく、まったく得もない。実に値段なりのクオリティ。
 熟成し、ふくらみのあるシャルドネには、白菜漬けのような漬物がよく合う(成分の乳酸が共通のため)ことは知られているが、このワインのようにシャープなものには、 なんとラッキョが良く合うことを今日確認した(容易に想像できることではあるが)。
 いつも取り澄まして外見ばかり気にしている女子高生のようなワイン。中身が薄っぺらいことは瞬時にバレている。でも純粋なところが可愛くもある。
<評定:C>


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