科学的データに基づいて冷静に判断せよと声高に主張する人たちには、 人として当たり前に備えるべき品性が欠落している者が多い。

　苦しんでいる人の立場になって考えろと声高に主張する人たちには、 科学や客観性に対する関心や理解が欠落している者が多い。

　他の多くの国に比べれば、感染者数も死者数も少ない。それは厳然たる事実である。 しかし、それをグラフにして見せ、「さざ波」などと言ってのける感性は、 命をただの数字としてしか見ていない、まさに品性下劣である。

　一方、そのような言葉尻だけを捉えて痛烈に批判することが正義だと信じ、 客観的に数字を考察しようともしない人々には、知性が欠落している。

　コロナはただの風邪などという非科学的な主張をして感染対策を拒否する行為は犯罪的であるが、 苦しんでいる人がいるのに店を開けるなといって嫌がらせをする行為もまた犯罪的である。 今は我慢の時。外出を控えようとさえ言っていれば常識的だと信じて疑わない人は、 その陰で悪者にされ、苦しんでいる人たちの痛みを考えたことがあるだろうか。

　感染者数が諸外国に比べて少ないのに、なぜ医療崩壊が起こるのか。 それは医療現場が悪いのだろうか。どうしたら解決できる？　制度の問題は？　政治の問題は？

　飲食店の一律時短営業にどれほどの効果があるのだろうか。 本当は感染対策を徹底した上で、営業時間を延ばした方がいいのではないか。 飲食店だけが悪いのか？　業界を線引きする基準はどこにある？　

　冷静に考えるべきことはたくさんある。 それをしないで、皆感情だけに走ってはいないか。

　なぜこうなってしまったのだろう。

　たとえばこのネットという無責任な、言いっぱなし掃き溜め空間が、 このまま自浄作用を持たない限り、世界の分断は進むばかりで、誰も救われることはないだろう。

　数字を客観的に見た上で冷徹に方策を練り、人の痛みに寄り添える言葉を。

　Cool Head but Warm Heart.（冷静な頭脳と温かい心）

　今こそ偉大な経済学者のことばを思い出そう。