ビール・発泡酒・チューハイの部屋

No.1〜20


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2000年7月6日
No.1 私が発泡酒を飲まない理由

  暑い季節を迎え、ビールや発泡酒が売れている。
  葡萄酒狂徒といえども暑い季節には冷たいビールが恋しくなる。気取ってwineなど飲んでる場合ではないのだ(とはいえ、私は半ば義務感から重くないwineを探して飲んでいる)。
  ところで最近、発泡酒がとみに売上を伸ばしているそうである。それには、おそらく次のような理由が考えられる。
  1.安いから
  2.美味しいから
  3.味のわからない消費者が多いから
  まず、1.は重要な理由であろう。消費不況を反映して、同じクオリティーの物なら、誰しも安いほうを買おうとする。それが嵩じて、 クオリティーがちょっとくらい劣ったとしても、安いほうがいいという風潮すらある。
  次に、2.については、各人の嗜好の問題であるから、アンケート調査でもしてみない限りはわからないが、多くの人が不味いと感じる物であれば、やはり大量には売れないだろう。
  発泡酒がバカ売れしていることの最も大きな理由は、実は3.ではないかと私は思っている。ただ、これにはちょっと注釈がいる。
  「味がわかる」という言い方自体、実は適切な表現ではない。味覚というものは、そもそもパーソナルなものなのであり、どんなものを美味しいと感じようが、その人の勝手である。 世間では、万人が美味しいと認めるものを美味しいと言わない人のことを、「味のわからない奴」というふうに言うみたいだが、この言い方は不当である。 本当に味がわかるとは、微妙な味わいの違いを的確に読み取る能力を持っていることだと私は思う。つまり、「違いがわかる」ということであり、言い換えれば、 好き嫌い以前の判別能力ということである。
  私は、基本的に発泡酒というやつを飲まない。その理由は至って簡単。美味しいと感じないからだ。
  はっきりいって、あんなものを飲むくらいなら、酒など飲まないほうがましである。美味いと感じないものに金を払うほど、私に余裕はない。
  悲しいことに、私には微妙な味の違いがわかってしまうので、何でも無頓着に飲んでしまう感覚が分からない。多分、多くの人から見れば、異端の部類に属するのだろう。
  日本には、味のわからない消費者が多いので、例えば珈琲文化も育ちにくいのだと思う(日本の喫茶業界の悲惨な状況については、「珈琲主義 Phase.2」をご参照いただきたい)。 こういう土壌では、きっと、安かろう悪かろうの商品を供給する企業がのさばって行くのだろう。
  なお、私は日常、発泡酒を飲まないとはいうものの、販売されているすべての銘柄を一度は必ず飲んでいる。どんなに期待のできない商品であっても、 もしかすると今までとは違う画期的なものであるかも知れず、その僅かな望みにかけて、日夜新製品を貪欲に探し回っているのである。
  後日、私の独断に基づく発泡酒ランキングというようなものを、発表したいと思う。

※補足:日本の法律の規定上、ビールと名乗るためには、麦芽使用率が2/3(66.7%)以上必要で、それ未満のものが「発泡酒」という範疇に含められている。なお、ドイツでは、麦芽100%でないとビールとは認められないため、 日本の製品のうち、ドイツでもビールと名乗れるのは、ヱビス、サントリーモルツ、アサヒスーパーモルト、アサヒ富士山、キリン素材厳選くらいだ。スーパードライも、キリンラガーも、サッポロ黒ラベルも、ビールとは認められない。

2000年7月23日
No.2 私の発泡酒ランキング

  私は、基本的に発泡酒を飲まない。ここでいう発泡酒とは、麦芽比率を低めることにより税金を安く抑え、低い販売価格を設定しているいわばビールの模倣品のことである。しかし、日常的に飲まないとは言うものの、各銘柄とも発売当初には少なからず試してはいる。 そこで、私なりのその経験から評価した発泡酒ランキングを、発表してみよう。

第1位 サントリー・マグナムドライ >>>ビールの呪縛から放たれた異端児
  ビールの模倣といういわば至上命題を潔く捨て去り、発泡酒としてできることを大胆に追求した意欲作として高く評価できる。ナイフのような切れ味、粗野なインパクトは、それだけで飲む者を納得させてしまう。

第2位 サッポロ・冷製辛口生 >>二番煎じではあるが、洗練されている
  基本路線は、マグナムドライと同じであり、二番煎じの感は否めないが、こちらのほうが完成度は高い。しかし、それがアダとなって、こじんまりしてしまっている。

第3位 キリン・淡麗生 >>ビール模倣品としての完成度は高し
  口に含んだ瞬間の味わいが最もビールに近いのはこれである。しかし、当然のことながら、後が続かないので、すかすかの後味がむしろ強調されてしまう。まあ、模倣もこれが限界なのだろう。

第4位 サッポロ・ブロイ >>後に残るフレーバーが、ビールっぽい
  一口目の充実度はキリン淡麗にかなわないものの、飲み込んだ後、鼻から息を抜いたときに感ずる麦っぽさは秀逸。これは同社のビールにも共通して見られる特徴であり、サッポロらしさが貫かれているといえる。

第5位 サントリー・スーパーホップス >>先駆者としての役目は終わった
  そもそも麦芽使用率を落として低価格化を図った先駆者が、これの前身のHOP'Sであった。あのときのインパクトには、ただならぬものがあったが、その過去の栄光だけではもはや生き残れない。今となっては、他製品に比べて特筆すべき特徴は何もない。

  なお、アサヒは発泡酒を作っていないが、賢明な選択であろう。王者としての貫禄といったところか。淡麗生の売上に寄りかかってしまっているキリンは、自らアサヒに対して敗北宣言をしてしまったかのように見える。 本論からは外れるが、キリンは、看板商品であるラガービールを生(非熱処理)にしてしまった時から、狂い始めたと私は思っている。昔のラガーの「重たさ」を懐かしむ声は、きっと多いに違いない。

2001年2月27日
No.3 アサヒ本生は、発泡酒界の風雲児となり得るか

  アサヒ本生を、早速発売日に試した。もちろん、大いなる期待を込めてである。
  当サイトでは、以前、アサヒだけが発泡酒市場に参入していないことを大きく評価した(→上記No.2「私の発泡酒ランキング」)。 ビールにこだわってきたアサヒも、時代の流れには抗し切れなかったということか。私の感覚では、世間が発泡酒などにうつつをぬかしているのは、 不況時のみの一過性の現象であると思っていたが、その肝心の景気が庶民レベルではいっこうに上向かないために、安ければいいという風潮が蔓延しているようだ (→「安ければいいのか」では、この風潮を憂えている)。
  さて、肝心のアサヒ本生の感想を列挙すれば、次のようである。

 1.香りが発泡酒臭くなく、実にアサヒらしい、クリーンな味に仕上がっている。
 2.他社製品の研究がきっちりとなされた上で、上手に独自性を出している。
 3.「所詮、発泡酒」という開き直りが感じられ、アサヒらしく、潔い。つまり、ビールの模倣品としてではなく、 発泡酒としてできることを究極まで追求している。
 4.しかし、やはり発泡酒は発泡酒に過ぎない。

  味の傾向からすると、私が今まで最も高く評価していたサントリー・マグナムドライとは、対極に位置する。キリン淡麗や、サッポロ・ブロイなどとも違う。
  マグナムドライも、ビールの模倣ではなく、発泡酒としてできる爽快感を、粗野でもいいからインパクトの強さという面から追求した。 キリンとサッポロ(ブロイ)は、必死にビールの模倣をすることにより、発泡酒の「枠」を広げようとした。私は、キリンやサッポロの方法論より、 サントリーのやり方を評価するものであるが、アサヒもこれと同じく、所詮はビールとは違うという開き直りの上に立ちつつ、 しかしながらサントリーのようにインパクトだけを売りにすることはしなかった。「アサヒ」という名を冠する以上、都会的で洗練された口当たり、 クリーンで濁りのない後味というような条件にこだわったのだろう。その心意気を、私は高く評価したい。
  粗暴だが真っ直ぐ力強いマグナムドライと、澄み切っていて粗雑さがなく美しいアサヒ本生。とてもよいライバルとなろう。
  当コラムサブタイトルに挙げたように、「風雲児」となるか。いや、「風雲児」という言葉は、むしろマグナムドライにこそふさわしい。 アサヒ本生は、遅れてやってきた「貴公子」と言ったほうがいい。しかし、どんなに魅力的な貴公子や王子様が白馬に乗ってやって来たとしても、 消費者というお姫様が、もう既に、乱暴だが人間味のある庶民階級の青年に心奪われているとしたら、振り向かせることはできないかもしれない。
  私の結論としては、やはりアサヒはあくまでもビールで勝負して欲しかった。ビールだけのシェアでいえばトップなのだから、確かにそれに発泡酒の売上を上積みできれば、 完全にキリンを押さえ込むことも可能だと読んだのかも知れないが、それは少し甘いような気がする。確かに多くの消費者は、スーパードライをその実力で評価しているかもしれないが、 その「好きなブランドであるアサヒ」から出た発泡酒ならば、容易にビールから乗り換えてしまって結局シェアの食い合いになるだろう。
  アサヒさん、消費者はそんなに味をわかってはいませんよ。
  しかし考えてみれば、スーパードライが出たときもそうだったなあ。時代の一歩先を行くのがアサヒ流ということなんですね。でも、発泡酒の品質を高めることが、 時代の先導だとは決して思えませんよ、アサヒさん。

2001年5月2日
No.4 サントリー・スーパープレミアム

  サントリーの新製品、MALTS SUPER PREMIUMを試した。言葉を失った。
  ビールの新製品が出ると必ず試す私ではあるが、こんな衝撃は、一体いつ以来だろう?そう思ってしまうほど、 今回のインパクトは強かった。
  清々しいミントを思わせるようなアロマホップの芳香。ずっしりと重く、しっかり広がる麦芽由来の苦味。 しかしながら、しつこくまとわりつくことはなく、後口は爽快。香りが華やかで、フルーティな第一印象は、上面発酵の「エール」のような感じだが、 味わいは決して軽やかではなく、しっかりした芯があって、なおかつドライ。色んなビールのいいトコ取り。 今まで日本にこんなビールがあっただろうか。これはちょっとした事件と言ってもいい。
  その昔、スーパードライをはじめて口にした時の衝撃と比べてどうだろう。忘れもしない、あれは1987年3月。 まだ首都圏のみで試験発売段階だったアサヒ・スーパードライに出会ったとき、今までの日本のどんなビールとも違う、 否それどころか、ドイツビールの模倣ではなく、これまでどこにもない味わい。一口で、これは大変なものが登場したものだと思った。 あれ以来、あんな衝撃は一度もない。
  今回のモルツ・スーパープレミアムの衝撃は、残念ながらあの時のスーパードライに匹敵するものではない。 今まで日本になかったという点は同じであるものの、スーパードライのように、何の模倣でもないというわけではなく、 ヨーロッパ系ビールに軸足を置いているからだ。しかし、それを見事に日本的に昇華させている。その洗練された技術は高く評価できると思う。
  サントリーの製品は、あえて苦言を呈すると、長い間品質的に満足のゆくものが少なかった。昔、缶にペンギンの絵をつけたビールが女性を中心に受けたことがあったが、 あの当時、サントリーは女性向け、初心者向けというイメージが定着していた。ビール好きからすると、なんとも物足りない味わいであった。 MALTSが出て、何とか品質をアピールできるようにはなってきたが、やはりマーケティング先行のイメージは払拭できていない。
  今まで販売力主導だったメーカーが品質志向になり、技術力を売り物にしてきたメーカーがマーケティングに力を入れる。 近年、製造業ではそんな傾向がうかがえる。例えば電機メーカーでは、松下が技術力を積極的に売りにするようになる一方で、 ソニーがイメージ戦略に力を注ぐ。そうやってオールマイティな実力を見せないと生き残れないのではないかという危機感が、どのメーカーにもあるのだろう。
  アルコール飲料に話を戻せば、今まで玄人好みで質実剛健なイメージの強かったニッカウヰスキーが、アサヒビールと結びつくことによって、 今後新たな地平を拓くかもしれない。
  サントリーも本気でビールを造れば、こんなに素晴らしいものが出来るのだ。当たり前のことを、実は初めて見せてくれた。 モルツ・スーパープレミアムは、そういうエポックメーキングな存在だと言える。しかも、発泡酒全盛で「安ければいい」といった風潮すらあるこの時期に、 レギュラー缶で発泡酒より100円も高い値段で出すという、 絶妙な手法とタイミング。少々高くても、良いものなら売れるはず。現在は、むしろ「少々高い」ということが、インパクトのある宣伝文句にすらなる (実はこの手法、サントリーは既に缶コーヒーBOSSでやっている)。
  問題は、品質を見抜く目と舌を持つ消費者がどれだけ居るかだ。残念ながら、今のような時期は、 高いというだけで敬遠されてしまうことがある。そのような門前払いに会って、間の悪かった商品として消えて行くか。 それとも、ヱビスビールのように、熱烈なファンに細々とでも支えられてゆくか。いずれにせよ、爆発的ヒットにはなりにくい商品なだけに、 このように口コミで広げてゆくしかないだろう。いや、私は決してサントリーの回し者ではないが・・・。
  今私の脳裏には、十分な品質を持ちながら消えていったいくつかのビールが浮かんでいる。飲み応え充分だったアサヒ・エール6、 華やかな香りとクリーンな苦味が調和したアサヒZ、古きよき時代を偲ばせたサッポロ・ハイラガー、 季節商品として数年続いたサントリー・ビアヌーボー、細菌混入事件で販売中止を余儀なくされたもののその実力は確かだったキリン・太陽と風のビール・・・。
  やっぱり大切なのは、品質より売り方なんだろうか。少し淋しい気がする。

2001年5月25日
No.5 キリン・クラシック・ラガー

  当コーナーで、以前、「キリンビールは、ラガーを生(非熱処理)にしてしまった時から狂い始めた」と書いた(→No.2 私の発泡酒ランキング参照)。
  この度、そのラガーが、以前の姿に戻って、帰って来た。「キリン・クラシック・ラガー」という名前だが、昔のラガーファンからすれば、これが正しいラガーなのであって、 今の生ビールに成り下がったキリンラガーなど、まがい物に過ぎない、といった感じであろう。
  確か、九州・四国で先行発売し始めたものだが、今回、近畿以東でもめでたく発売となった。

※訂正:3月より中国・四国地方で先行発売していたものだが、5月23日から近畿2府4県と東海3県でも発売開始となった。従って、北陸及び長野、静岡以東の地域では未発売である(関東方面の読者の方、期待させてごめんなさい)。

※後日追記:6月13日より東北以南の東日本でも発売となった。これで本州と四国の全域で入手可能となり、 残された未発売地域は九州と北海道である。


  「新しい感動」というものでは決してないが、「そうそう、これこれ」という味わいで、 実に懐かしい。これぞ大人の男のビールであり、ノスタルジーすら感じさせる。
  こんなことを書くと、私も年をとったと自白しているみたいだが、昔初めてビールを飲んだ時、とにかくビールというのは苦いものだ、という印象が残っている。 まさにそのイメージを作り上げていたのが、このキリンラガーなのである。
  記憶の中のラガーは、もっと「重たい」ものだったが、今回冷静に味わってみると、重いというよりは、後に残る"これでもか"という圧倒的な苦味が、このビールの特徴である。 確かに本場ヨーロッパのビールからすれば、深みとか味わいは足りないのかも知れない。しかし、この「苦味以外の味の要素を許さない」と言えるほどの個性は、日本のビールの1つの究極であると思う。
  きっと今という時代は、この洗練されない無骨さが、新しく見えてしまう時代なのだろう。つまり、世代が一巡してしまったということだ。
  安物が異様にもてはやされる昨今にあって、モルツ・スーパープレミアムもそうだが、しっかりした実力を持った本物が続々登場しているのは、 本当に歓迎すべきことである。
  ますます発泡酒が陳腐に見えてきた。私自身は進んで発泡酒を飲むことはないが(とは言え、サッポロ北海道生搾りなど、新製品は必ず一度は試している。義務として。)、 あいかわらず発泡酒が売れ続けている事態を、たいへん悲しく思っている。

2001年6月12日
No.6 地域限定ビールの消息

  北海道の読者の方からメールを頂いた。「サッポロ・クラシック」という北海道限定商品をご存知ですかという内容だ。
  (ご投稿くださったM.Sさん、誠にありがとうございました。)
  実はこのビール、以前に何回か試したことがある。それも、北海道に赴いてではなく、本州に居ながらである。
  6,7年ほど前、地ビールというものが世に多く出回り始めた頃、大手ビールメーカーもこれに対抗するかのように、 こぞって地域限定ビールを作り出した。そのブームに乗って、主に大手百貨店などでは、全国の限定ビールを扱うようになった。 私の住む関西でも、居ながらにして全国のご当地品を賞味することができた。その頃、サッポロ・クラシックも何度か飲んだ。 覚えている特長は、華やかさはなく重厚、苦味が強いが押し付けがましくなくクリーン、基本がしっかりしていて飲み飽きない、これぞビールという「いぶし銀」の味わい、 といった好ましいものである。
  当時流行した地域限定ビールのうち、一体どれだけのものが現在も生き残っているのだろうか。 今となってはそれぞれの現地の情報を収集しない限り、わからない。その、もう既に存在しないかもしれない いくつかの地域限定ビールに関し、当時のテイスティング・メモが残っているので、ここに公開したいと思う。 なお、上記サッポロ・クラシックは、当時のブームに乗った一過性の限定品とは格の違う定番品という認識から、メモを残していない。 また、私の地元関西の限定品には、キリン・関西風味、アサヒ・生一丁(2001年現在も細々と続いている)などがあったが、いずれも強く印象に残るものではなく、 こちらもメモは残していない

以下、1994年6月〜1995年5月頃の私のテイスティング・メモである。

1.キリン・北海道限定生ビール
  極めて苦味が強い。口当たりからして重く、いかにもキリンらしい。軽いビールに飽きた時に飲めば、非常に新鮮に感じるだろう。 しかし、飲み飽きしそうな味であり、好き嫌いがはっきり分かれるタイプである。

2.キリン・北のきりん
  香りも口当たりも直球勝負という感じ。かなり押しの強い単一の苦味だけがあり、口の中で広がらずに消えてゆく。後に嫌味は残らない。 言い方をかえれば、作られたような苦味がグッと押してくるだけで別段深みも感じられない。札幌のビールは、とにかく苦みばしっていなければならない というポリシーなのか。でもそれだけという貧困さを感じてしまう。

3.サッポロ・道産の生
  北海道のビールのイメージは各社とも苦味の強いものという固定的考えがあるようで、これも例に漏れない。 しかし、嫌味はなく、サッポロ独自の「麦」らしい豊潤な苦味である。キレも悪くない。

4.アサヒ・みちのく淡麗生ビール
  口当たりは極めて上品。甘味の微塵もなく、キレも非常に良い。ほんわりとした苦味が残って心地よい。 クリアだが、ケンケンとはしていないので、押しが強い感じはない。

5.サッポロ・麦酒物語 東北限定醸造
  香りはない。きめ細かな苦味がふわっと広がり、ふくよかなフレーバーを残して味はさっと切れる。 極めてピュアで、一点の濁りもない。品のよさは抜群。これはサッポロのひとつの究極と言えるだろう。

6.アサヒ・福島麦酒
  クリーンだがわずかに甘い香りと金属的な口当たりは、スーパードライに酷似している。 しかし明らかに違うのは後味で、まろやかな甘味が口中に残る。適度な渋味もスーパードライのそれに似ているので、 両者を区別することはかなり難しいと思われる。特徴は薄いが、それだけ万人受けしそうである。

7.アサヒ・江戸前 生
  香りはきわめて弱く、口当たりから後味まで、全プロセスを通じて、ピュアの一言。すっきり、あと腐れのない、 まるで江戸っ子のようなキャラクター。飲み干したあと、口中に何の味も残さず、ひたすら爽快。しかも、 スーパードライのように金属的なのではなく、まるでスパークリング・ミネラルウォーターのように純粋無垢。 refreshmentというビールに求められる1つの役割の究極であろうと思う。

8.キリン・太陽と風のビール
  わずかに甘い香り。口当たりはクリア。ほろっと柔らかい味わいだが、甘味より苦味が勝る。 キリンらしさを強調しながらも、まろやかな味を画策した不思議な製品。味を意識せずがぶ飲みする人にとっては 取り柄のないビールと取られようが、味わって飲む人にとっては、非常に奥が深く、複雑で、特異なビールと言えよう。 このマニアライクな技巧も多くの人には認知されないのであろうか。

9.キリン・浜きりん
  口当たりは軽いが、爽快さに欠ける。切れが今ひとつで、良く言えば豊潤であるところがキリンらしい。 これでもさわやかさを追求しているであろうことはよくわかるが、こういったアサヒ的路線をめざすのは、キリンはやめた方がいい。 妙な甘味が後に残り、中域が強調されたような味わい。やわらかく上品な仕上がりは評価できるが、中途半端さが残念だ。

10.アサヒ・名古屋麦酒
  香り、口当たりとも、まあクリーンな印象ではある。通常のビールに比べ約20%濃度が高いとのことだが、 さすがはアサヒ、くどい味ではない。ただ、渋味が強く、後味がねっとりと甘い。アサヒの基本テイストをベースにしながらも、 かなり冒険をしている印象。すぐに飽きが来そうである。

11.キリン・でらうま
  香りからして甘く、口に入れたとき「ぬーっ」とした感じでだらだらと味が残る。 飲み応えがあるといえばあるが、ビールの醍醐味とはほど遠い気がする。これを美味しいと思う人が一体どのくらいいるのだろう。

12.サッポロ・名古屋名水生ビール
  中京地区限定ビールの中では、一番すっきりしている。淡麗な口当たりだが、キレは悪く、クリームのような後味が気にかかる。 名古屋の味覚のイメージとはこういうものなのか。実際、こういうものを好む人が多いのだろうか。

13.キリン・北陸づくり
  深みのある香りと苦みばしった口当たりはまさにキリン独自のもの。しかし、重みはなく、からっとしていて、 苦味は残るもののスカッと消えてゆく感じ。ラガーから豊潤さを取り去ったような味であり、非常に中途半端。

14.サッポロ・北陸限定'95
  苦味の中に酸味が内包されたような複雑な口当たり。後には渋味が残る。 上品な印象を与えながら、実は非常に粗暴なビールである。なじみにくさを感じた。

15.キリン・四国丸飲み生
  香りはほとんどなく、ストレートに押してくる苦味はケンケンしていて金属的。 適度な渋味があるが、深みはなく、切れがよい。スーパードライに似ており、キリンらしからぬ仕上がり。

16.アサヒ・博多蔵出し 生
  香り、口当たり、のど越し、後味、すべてがピュア。もしかすると「江戸前」と原材料や製法が一緒で、水だけが違うのでは、といった感じである。 後に何も味を残さず、炭酸水のようである。続けて飲んでも決して飲み飽きることがない。「江戸前」と並べて飲んでも、おそらく区別がつかないのではないか。

17.サッポロ・九州ビールのどごし
  香りはほとんどない。口当たりはぴりっと辛く、押しの強い苦味が後に残る。甘味は微塵もない。 あまりキレは良くない。豊潤さに欠け、直球勝負という印象は、キリンファンには物足りず、アサヒファンには押しが強すぎと評価されそうである。

18.サッポロ・よか生
  繊細な苦味。ボディのしっかりしたビールらしい味わい。押しは強くなく、キレは良い。極めてピュア。 麦酒物語に酷似している。すっきり系だが、奥の深さを持っている。

  以上が限定品のすべてではないが、こうして俯瞰してみると、場所と名前が違っても、かなりキャラクターの似ているものがある。 各社かなり手を抜いて同一あるいは類似レシピの使いまわしのようなことをやっていたのではないか、と意地悪く勘ぐってしまうのは、 私だけであろうか。しかし、昨今のようなスカスカの発泡酒が市場を席巻している味覚貧困時代に比べ、 なんと豊かな時代だったのだろう。

2001年7月7日
No.7 再び、発泡酒を斬る

  最近また相次いで発泡酒の新製品が発売されている。当サイトでは、昨今の「発泡酒全盛」現象を憂えているが、 それでもWEB MASTERとしての義務として、やはり新製品のreportは必要であろう。そこで、新製品2種をテイスティングしてみた。
1.風呂あがり生 / SUNTORY
  香りは弱い。その分、嫌な臭いもしないので、その点は評価してよい。口当たりは柔らかく、丸みがある。 味わいは当然薄っぺらく、後味も実に発泡酒らしく、あまり快くない余韻を残す。
  まったくインパクトがなく、軽くふわっと飲み干せてしまう。味がないので、臭みも弱いが、これならただの炭酸水を飲んでいるのと大差ないではないか。 炭酸水よりも口当たりは柔らかく、爽快感も弱いので、まったく取り柄がないと断じてよい。

2.常夏<生>エクストラドライ / KIRIN
  発泡酒はどれも泡にパワーがなく、ちりちりした感じなのだが、これは特に泡のきめが細かく、シュワーっと盛り上がる感じ。 香りに発泡酒臭さはなく、口当たりも実に柔らかい。飲み応えはまったくないが、スーっと喉に入って行くので、夏向きといえば夏向きである。 ただ、エクストラドライというほど切れ味は良くない。まったく引っ掛かりがなく、しかも発泡酒特有の「穀物臭さ」が弱い点は評価できる。 売れている同社の「淡麗」より、こちらの方が万人受けしそうである。でもビールファンからは、「まったく飲んだ気がしない」と一蹴されて終わりだろう。

総評
  やはり今回もまったく満足のゆくクオリティではなく、なぜこんなものをテイスティングしなければならないのかと、こんなサイトをやっている自分の立場を呪った (別に、誰に強制されたわけでもない。私が好きでやっていることだが)。もうこれらの商品を飲むことは二度とないだろう。 発泡酒を飲むたびに、本当にこんなものが売れていることが不思議でならない。

2001年7月11日
No.8 三たび、発泡酒を斬る

  さて、発泡酒に対していつも悪態をつきながら、性懲りもなく新製品のテイスティングである。 今回も期待は皆無であり、むしろバッサリ斬るつもりで試してみたのだが・・・。

セブン / SAPPORO
  香りに発泡酒的臭みはなく、ドライタイプのビールのように、さわやかな第一印象。 泡(form)のきめは細かく、雪のように白い。口に含んだ瞬間、そのクリーンな味わいに驚いた。もちろん深みなどないのだが、 それは発泡酒であるから当然のこととして、穀物的な雑味がなく、なめらかな点は、特筆に値する。 ASAHI本生のクリアな爽快感に近いが、アルコール度数が高い(7%)せいか、甘味すら感じる。 原材料のパワー不足をアルコール感が救っており、とてもよいバランス。普段感心することのない発泡酒にあって、 これほど明確に独自性を持っており、評価に値するものは、SUNTORYマグナムドライ、ASAHI本生に続き3本目である。 日頃発泡酒に対して罵声を浴びせ続けている私としても、これは素直に評価せざるを得ない。
  積極的に飲もうとは思わないものの、もう一度飲んでもいいかなと思わせる存在だ。

2001年7月16日
No.9 BEER?

 某大手スーパーから発売された「D-DRY BEER(ディー・ドライ・ビール)」を試した。
 値段は税抜き\138(税込み\144)と安いが、一応ビールということで、期待して臨んだ。
 注いでいる時の泡の立ち方は、妙にきめ細かく、発泡酒のよう。香りもほとんどなく、まるで深みを感じず、こちらも発泡酒のよう。 もしやと思いながら味わってみると、やはりビールと呼べるような代物ではない。
 しかし、缶の表示は、堂々と「ビール」である。そこで、こんな想像をしてみた。
 このビールの麦芽比率は、ビールと呼べるぎりぎりの67%程度に抑えられているのではないか。 麦芽比率67%を割るとビールではなくなるが、その昔、SUNTORY HOPSが売れ出した頃、まるで懲罰的とも思える税率変更が行われ、 発泡酒が節税メリットを享受するためには、麦芽比率を25%未満にまで引き下げざるを得なくなった。そんな経緯があって、現在各社から発売されている発泡酒は、 軒並み麦芽比率を25%未満に抑えている。その成果としての、1本145円なのである。
 ところが、それを逆手にとれば、麦芽比率が67%以上である限り、堂々とビールを名乗れる。ただ、普通にそんなものを国内で作ったのでは、 とてもコストダウンはできない。そこで、海外で製造することによって見事コストダウンに成功した。
 もしこの想像が当たっているとすれば、実に消費者をバカにした話である。どうせ皆、味などわからないのだから、法律上ビールと呼べる条件さえクリアしておけば良い。 そんな姑息な手段である。
 まあ値段が他社の発泡酒と同じであるし、味も売れ筋発泡酒と比べて特に遜色はないから、実質的に損はない。ただ、だからといって、こんなダマシを許して良いだろうか。 こんな品質のものを「ビールです」と言って堂々と売り出すその無節操さ、プライドのなさには呆れ果てる。
 私は、特定の企業を攻撃するのが本旨ではないが、こんな商品は売れないと思うし、これを良いと思う人の感性を大いに疑う(もしこれが売れれば、日本の消費者のレベルはその程度だったということで、 一応この戦略は成功ということになる。その戦略自体、別に責められることではないが、私は、そんなやり方は嫌いだ)。 不景気に乗じた「安けりゃ文句ないんだろ」的商売は、何の文化も生まなければ、人の心を豊かにすることもない。
 読者の皆さんも、機会があれば一度このビールをお試しになっていただきたい。その上で、冷静な判断を下されたい。 また、お試しになったご感想をお寄せいただければありがたい。

2001年7月17日
No.10 北海道生搾り / サッポロ

 快進撃を続けている発泡酒、SAPPORO「北海道生搾り」について、当サイトでは正式にコメントを発していなかった。 そこで、今回改めてテイスティングをしてみた。
 一般的に泡に力のない発泡酒の中でも、これは特に持続しない。香りはほどほどに発泡酒的で、やや苦味を想像させる。 口当たりは柔らかく、繊細。口中にほろっとした甘味と苦味が広がる。その後、味が続かないが、甘味がじんわり減衰する。 全くパワーがない反面、雑味もなく、中庸な味わい。ビールっぽさは弱く、さりとて爽快感もほどほど。どちらにも突出しない、 まるで典型的日本人像のような発泡酒。同社のブロイやKIRIN淡麗などに比べると味わいがなく、ASAHI本生のようなシャキッとした感じもなく、 SUNTORYマグナムドライのようなパンチもない。目立った特長がないところが特長といえる。ビールの重さが苦手な人にも飲みやすいし、まったくスカスカというわけでもない。 こういうどっちつかずの製品は、この日本では、 定番商品として永い間残ってゆく可能性があると思う。無論、ビール好きにはまったく物足りない製品であることは言うまでもないが。

2001年8月16日
No.11 チューハイ戦争〜人気の缶チューハイをテイスティングする〜

 ヒット中の缶チューハイの飲み比べをしてみた。キリン氷結果汁とアサヒゴリッチュの2本である。同じ土俵で比較するため、どちらも「レモン」を選んだ。

キリンチューハイ 氷結果汁 レモン

 缶を開けた瞬間に立ち昇るレモンの香りが実にフレッシュで、まさに生のレモンを今しぼったような香りだと言っても良い。 この香りだけでも、インパクトは十分である。飲み口はすっきりとし、アルコールという感じはなく、極めてクリア。 後味もすっきりとし、実に爽快である。これならお酒に弱い人にも飲みやすい。斬新な商品。

アサヒチューハイ ゴリッチュ レモン

 香りは、果汁というより、いかにも「香料」。サイダーかジュースのような人工的な香りである。「天然果汁使用」とあるが、果汁よりもそれを補完すべき香料のほうが強い感じだ。 飲み口は柔らかく、くせがないので飲みやすい。しかし、後味にまた若干人工的な感じがある。妙なアルコール感がないところはキリンチューハイと似ているが、 こちらは従来の缶チューハイの進化版といった感じであり、新しい感動はない。

総評

 香りのフレッシュさ、味わいのシャープさ、後味のすっきり感、パッケージの斬新さなど、どれをとってもキリンチューハイの特異性が際立っていた。 アサヒは、その売り方からして中高年を意識した商品なのだが、冒険を好まない世代向けという意味では成功していると言える。 キリンは、今まで缶チューハイなど飲まなかった世代に積極的にアピールしてゆこうという意気込みが感じられ、そのパワーがまったく従来になかった 魅力を生み出している。
 どちらがチューハイらしいか、と聞かれれば、迷わずアサヒだが、今回は、そのチューハイの既成概念を力強く打ち破ったキリンチューハイに軍配を上げたいと思う。

2001年8月18日
No.12 人気の缶チューハイをテイスティングする 2

 前回好印象だったキリンチューハイ氷結果汁の対抗馬として、今回はサントリースーパーチューハイを取り上げた。やはり同じ土俵で比較するため、今回はどちらも「グレープフルーツ」を選んだ。

キリンチューハイ 氷結果汁 グレープフルーツ

 レモンと同じく、缶を開けた瞬間に立ち昇る香りが実にフレッシュ。まさに生のグレープフルーツという感じだが、ロッテガム・グレープフルーツの香りにも酷似している。 飲み口は、やはりこちらもすっきりとし、果汁のフレーバーが味わいの強い牽引役になっている。 飲み干した後の爽快感もレモンと全く同様で、しっかりとブランドイメージの統一ができている。

サントリースーパーチューハイ グレープフルーツ

 香りはフレッシュであるもののやや弱く、ポカリスエットの香りを1.5倍くらいに強めたような感じだ。 飲み口はかなり透明感があり、これも天然果汁の効用だろうか。しかし、キリンほどの衝撃はなく、すぐに焼酎らしさが顔を出す。 アルコール感は、キリンより強く、アサヒと同程度か、やや弱いといった位置付け。廉価版缶チューハイのさきがけは、確かこれではなかったか。 その印象が今や薄れ、存在感も弱まってしまったが、クオリティは低くはない。

総評

 前回のアサヒも加えて3社の比較で言えば、今までのイメージを大きく打ち破った衝撃作として、キリンチューハイ氷結果汁のインパクトは極めて大きい。 爽やかさという点では、サントリーも健闘している。一方、アサヒは、お酒が好きで保守的な層に最も支持されるような飲み応えがあり、 上手く住み分けはできている。広告手法も含めて、先発のサントリーがどっちつかずのエアポケットに落ち込んでしまっているようで、 苦戦を強いられよう。

2001年9月28日
No.13 銀河高原ビール ドイツ・クラシック

ginga kogen beer  銀河高原ビールのドイツ・クラシックという銘柄を飲んだ。ドイツ産麦芽100%のピルスナービールとのこと。 コンビニで偶然みつけたものだ。
 真っ白な泡は非常に力強く、こんもりと盛り上がり、しかもかなり長い時間持続する。 これを見ただけで、クオリティの高さがわかり、飲む前から期待は非常に大きい (もちろん、いつもながらルールどおりの「三度注ぎ」を実行している)。
beer glass  実際にグラスに鼻を近づけると、ホップの華やかな香り(ペパーミント的)が印象的。いかにも正統派のピルスナービールである。 味わいは、伝統的なドイツビールの風格があり、そこにほんの少し日本的なニュアンスを付け加えた感じ。 程よい苦味、引き締まった後味。しっかりとした飲み応えがあるのに、飲み飽きない。
 当サイトのメイン・コンテンツはwineの利酒日記だが、実は、私は入手可能なビールのほとんどすべての銘柄をテイスティング し続けている。その中でもこのビールは、久々特筆に価する1本。
 ここ数ヶ月の私の定番ビールは、MALTS SUPER PREMIUMと、KIRIN CLASSIC LAGERだったが、 第3の定番登場となった。とてもうれしい出会いである。

2001年10月23日
No.14 キリン 白麒麟・冬限定マイルド<生>

Shirokirin  冬季限定の発泡酒、キリン「白麒麟」を飲んだ。毎度毎度、発泡酒を酷評しながら、あえて新製品を試すのは、 ひとえにWEB MASTERとしての義務感がそうさせるのだ。
 泡立ちの力のなさは、典型的な発泡酒のそれで、ふつふつと小さな気泡が現れながら、だんだんと消えてゆく (色こそ純白だが、まるでバクテリアかなんかが発生しているドブ川の水面みたいだ)。 香りは穏やかで、臭みはそれほどない。味わいは、苦味が抑えられ、押しが弱く、さっと風味が消える。 後に残るのは、発泡酒に典型的な干草のような臭みと、奇妙な酸。同社の「淡麗・生」ほど嫌味が強くないので、 飲みやすさという点では、こちらが勝る。ビール嫌いの人にも受け入れられるのではないか。
 最近思うが、発泡酒を飲むときは、いっそのこと「炭酸水」だと思って飲んだらどうだろうか。 そうすれば、味わいもへったくれもなく、爽快感だけを与えてくれればよいと考えることができる。 しかし・・・炭酸水を飲むなら、例えば「ペリエ」などのほうが後に嫌な味や臭いが残らないから、よっぽどいい。 ということは、やっぱり救いはありませんね。まあ、この製品、CM戦略によるイメージだけである程度は売れるだろうから、 メーカーとしてはそれで御の字なんだろう。キリンさんも落ちましたな。

2001年10月25日
No.15 サントリー ダイエット<生>

Diet nama  ダブル孝太郎のCMで話題の発泡酒。今回もただ義務感のみで、トライ。
 泡は弱くすぐに消える。香りは意外とクリーンで、嫌な感じはない。ミント的清々しさも感じる。 香りの印象は、思っていたより良好だが、口に入れた瞬間に、すべてが見えてしまった。 まるで味わいと呼べるものはなく、とにかく水っぽく、ぺらぺらの紙一枚のようで、 自分が一体今何を飲んでいるのかさえ分からなくなってしまう「ここはどこ?私は誰?」的飲み口。 しかし、裏を返して言えば、まったく引っ掛かりがなく、嫌味もないので、まさに炭酸水としてゴクゴクと喉の渇きを癒すのには良い。 夏に売っていた「風呂あがり・生」とか、「常夏」のどうにも許し難い不純な感じに比べると、こちらの方がよっぽど潔い感じだ。 これなら、「ビールは苦くて飲めません」という人にも飲めるだろう。また、言い換えれば、かなり飲み疲れた飲み会の最後に、 無理やりビールを注がれたのだけれど、もう気持ちが悪くて一口も飲みたくない、というようなシチュエーションでも、 この発泡酒なら、鼻をつまんで喉に流し込めそうだ。そういった、毒にも薬にもならない飲み物。
 でも、正直な話、「こんなもの金出して飲むか?」というのが本音。二度と買いません。
 ところで孝太郎さん。そんなお気楽な顔して発泡酒のCMなんか出ていていいの?  「有事法制を考える時かもしれない」などと大胆なことを、いつもの妙に高いテンションで言い放っているのは、あなたの肉親でしょ? いざ鎌倉へ、あなたも行ったほうが良いのじゃないのかな。

2001年10月27日
No.16 基本に立ち返って、バドワイザー

 2回続けて発泡酒をレポートしたが、発泡酒を飲むたび、薄いと言われるアメリカ産ビールを思い出す。 そこで、基本に立ち返って、アメリカを代表するビールであるバドワイザーを、改めてテイスティング。
 泡に力はなく、色合いも実に薄く、ここまでは発泡酒に非常に近い。香りも軽やかだが、奥のほうにホップの香りがあり、 穀物臭い発泡酒とは一線を画す。口当たり、喉越しとも軽やかで、スッと飲めてしまうが、 後味にしっかりとしたビール感がある。やはりまぎれもないビールだ。いくら軽いからといって、この大ベストセラーと、 ビールもどきの発泡酒とを比べること自体が失礼なのだと実感。重みという点では、バドワイザーよりも、 発泡酒の「キリン淡麗」のほうがあるかもしれないが、発泡酒がどんなに頑張ったところで、何とも言えない穀物の臭みは 拭い去れない。ビールに近づけようという不毛な努力を潔く諦めた「アサヒ本生」だけがクリーンな味わいを実現しているが、 このバドのビール感に追いつくことはできていない。
 結論:どんなに軽くとも、ビールはビール。さすがにベストセラー。軽いだけではない。

2001年11月24日
No.17 神戸ビール

Kirin Kobe Beer  キリンビールが神戸工場だけで造っている限定製品「神戸ビール」を飲んだ。
 私自身これが初めてではないが、大手が造る貴重な「ご当地品」として、改めてテイスティングをしてみた。
 泡はきめ細かく、しかもきれいにこんもりと盛り上がり、期待感は上々。香りは、 苦味よりもふくよかさを感じさせる柔らかで、甘やかで、リッチなもの。味わいも実に豊かで、まるでバナナのような優しい甘味が口いっぱいに広がり、 ミントのニュアンスと共に優しく尾を引く。とげとげしい所がなく、極めてグラマラスな味わい。
Kirin Kobe Beer  ドイツのボック・ビールにならったという看板に偽りはない。国産らしからぬ国産として、高く評価できる。
 それにしても、なぜ、これが「神戸」なのだろう。確かに神戸には「舶来」というイメージがぴったりくるが、それなら横浜でも良さそうだ。
 飲み応えのある製品なので、じっくりビールの味だけを味わいたい。ただ、爽快感には欠けるので、飲み飽きするタイプともいえる。 夏よりも秋・冬の夜長にゆったりと楽しむためのビールだ。

2002年1月23日
No.18 サントリー 冬道楽・生

冬道楽  サントリー「冬道楽」という発泡酒を試した。
 例によってボロクソに書くつもりで試しているのだが、この製品には、ある意味「なるほど」と思わされた。 「冬の味覚にぴったりの、すっきり旨口の発泡酒です」というコピーが書かれているが、まさにそんな感じの仕上がりだ。 刺激が弱く、ふんわりほの甘い。もちろん発泡酒臭さはどうにもならないのだが、それでも上品に仕上げている。 缶のイラストにあるとおり、カニ料理との相性はよさそうな感じだ。
 発泡酒も競争が激しくなり、各社いろいろと工夫を凝らしている。技術も着実に上がってきているようだ。 無論、当サイトで執拗に繰り返しているように、まがい物であることに違いはないが、 まがい物でも、世間の支持に後押しされ、執念で続けていると、それなりにスタイルが確立されるようだ。
 例えば缶コーヒーが、コーヒーとは別の飲物であるように、発泡酒も、ビールのまがい物という位置付けではなく、 発泡酒という独自の飲物なのだと考えれば、そんなに腹も立たない。最近は、そう思うようにしている。

2002年1月26日
No.19 サッポロ ひきたて焙煎<生>

ひきたて焙煎  サッポロ「ひきたて焙煎」という発泡酒を試した。
 注いだ色は「焙煎」というネーミングの通り琥珀色に近い。泡立ちも悪くはなく、見た目ではすぐに発泡酒だとはわからない。 香りの第一印象も香ばしく、イヤな臭いはない。味もそこそこ飲み応えがあるが、やはり厚みはなく、最初の見せ掛けだけで、 中は空っぽという感じ。
 通常の発泡酒に比べて、いかにもという発泡酒臭さはあまり強くないので、この工夫は一応成功している。 こういった小手先のテクニックではあっても、新手の製品を送り出してくれることそれ自体は、消費者の選択が広がるという意味で、 良いことであると思う。



2002年1月27日
No.20 サッポロ FINE LAGER 生

SAPPORO FINE LAGER  サッポロの新しい発泡酒「FINE LAGER」を試した。缶のデザインがキリンラガーに似ているということで、 キリン側から抗議が寄せられたものだ。
 確かに、よく似ている。抗議して当然だと思う。類似品が出るといつも思うのだが、そんな姑息な手段を使ってでも 売りたいと思うなんて、企業としてのプライドはないのか、と言いたい。当然、真似ではないと主張しているのだが、 真ん中に「発泡酒」の文字を大きく入れていることが、これ見よがしに「真似じゃないんだぞ」と言っているような気がして、 余計に印象が悪い。この文字によって、ビールと間違えて買う人は少ないかもしれないが、一瞬キリンの製品かなと思ってしまう。 まあこういったことはよくあることなので、今さら目くじらを立てるほどのことでもないと言えるのだが。
 肝心のクオリティーであるが、まずグラスに注ぐと泡がこんもりと盛り上がり、今までの発泡酒とはかなり様相が異なる。 色もしっかりめである。香りにも雑な印象はない。口に含むと、最初のインパクトはなかなかのもので、ビールにとても近い。 渋味が強く、かなり飲み応えがある。さすがにその後の厚みはないものの、かなり画期的な発泡酒である。 ただ、飲み進むうちに、口中に穀物臭さが蓄積されてゆくようで、ああやっぱり発泡酒だったんだと思い知らされる。
 それでもブラインドで、「新製品のロー・カロリービールです」と言われたら、信じると思う。その程度のビール感がある。 あっぱれ、である。姑息な手段を使わずとも、充分に実力で勝負できるのにと思う。 同社の「北海道生搾り」とまったく路線が反対なので、競合もしないはずだ。消費者がイメージではなく、味で選んでくれればの話だが。

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