利酒日記〜安葡萄酒に彩られた日常〜

2000年12月


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2000年12月2日  BLANC
COTE DU JURA CHARDONNAY 1996 BLANC DE BLANCS / HENRI MAIRE
コート・デュ・ジュラ シャルドネ ブラン・ド・ブラン / アンリ・メール
JURA地方、AC:COTE DU JURA

  かなりしっかりした色で、ほとんど黄金色。最初、はちみつやバニラの香りがあり、グラスを回すと湿った土を伴う芝生のような緑の香りが強烈に立ち、 そのほか、化粧品のような化学物質的香りと、濃厚なカラメルシロップなどの香りも感じる。ムスク系の香水のようでもあり、中国の扇子の香りにも似ている。 良く言えば高貴で妖艶だが、悪く言えば厚化粧の貴婦人という印象。 この香りとは裏腹に、味の第一印象はとても引き締まっており、酸を中心としたシャープな味わい。 甘味はほとんど感じない。深みはないが、鋭い酸が骨格をつくっている。青臭い、生臭い余韻がかなり続く。 個性が際立っているという意味で下記評価をしたが、味のまとまりに欠ける点と、個人的にこの味はあまり好みではないので、 好き嫌いで評価するなら、最低ランクになるだろう。
  なお、BLANC DE BLANCSというのは、本来シャルドネのみを使用したシャンパーニュに使われる言葉だが、このワインもシャルドネ種単一で 作っているという意味でこの語を用いているのであろう。
<評定:C>

2000年12月3日  ROUGE
CHATEAU DE POUZOLS 1997 CUVEE PRESTIGE / MINERVOIS
シャトー・ド・プーゾル キュヴェ・プレスティージュ / ミネルヴォワ
LANGUEDOC-ROUSSILLON地方、MINERVOIS地区、AC:MINERVOIS

  やや黒みがかったルビー色で、縁には少しオレンジ色が入り始めている。香りはひっそりとしてあまり立ち昇らず、紫色系の香りで引き締まっている。 少し脂っぽい印象もある。口当たりは酸味が中心で、甘味はほどほど、パンチ力には欠け、タンニンはシルクのようになめらか。 スミレの花的余韻がかすかに残る。全体を通して滑らかで、押しは強くないが、上品な印象のワイン。想像以上の実力であった。
<評定:B+>

2000年12月7日  BLANC
CHENIN 1998 VIN DE PAYS DU JARDIN DE LA FRANCE / ACKERMAN
シュナン ヴァン・ド・ペイ・デュ・ジャルダン・ド・ラ・フランス / アッケルマン
VIN DE PAYS

  色はレモンイエロー。香りはフレッシュなレモンのようにシャープな印象で、セルロイドのように石油的な香りと、 バニラっぽい甘さも感じる。口当たりはシャープな酸が中心。切れ味も極めて鋭い。しかしながら、中心に甘味を感じ、ふくらみもある。 かすかな苦味も。引っかかりのない真っ直ぐな酸が作る余韻は長くはないが、とてもきれい。最後まで酸と甘味が拮抗し、 不思議なバランスを保っている。\680で入手したことを考えると、実に出来過ぎの感がある。上代は\1,000以上と思われるが、 それでもなお、高C/Pと言える。この繊細さからすれば和食向きと言えるが、酸が強いので、実は結構難しい。 ポン酢を使う湯豆腐や、寄せ鍋、あるいは豚しゃぶ等がぴったりくるのではないだろうか。
<評定:A>

2000年12月12日  BLANC DOUX
CHATEAU PIERRON 1997 / BORDEAUX MOELLEUX
シャトー・ピエロン / ボルドー・モワルー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX(甘口)

pierron   透明度は高いがしっかりとした黄金色。香りは、はちみつのような甘さと、オレンジのような酸っぱさを感じさせ、 ソーテルヌを軽やかにした感じ。口に含むとさわやかな甘味が広がり、やはりソーテルヌから重みを取った感じ。 その分だけ酸が前に出てくる。余韻は長くはない。酸が生き生きとしているので、重みはないのだが、 味の傾向としては、極甘口を薄めたようなイメージ。
  食事には合わないであろうことを最初から承知の上での冒険。やはり魚料理(サーモンのホイル包み焼)には、 少々つらく、生臭さが強調されてしまった。急きょトーストしたパンにFAUCHONのミルクジャム(CONFIT DE LAIT)を塗ってみたところ、 甘味が融合し、とてもよくマッチした。MOELLEUXとは、「柔らかな」という意。まさにその通りの味わいであった。 500mlのスリムで可愛らしいボトル。
<評定:A>

2000年12月17日  BLANC
CHARDONNAY DELLE VENEZIE 1999 / LE SPERANZE
シャルドネ・デッレ・ヴェネツィエ / レ・スペランツェ
イタリア、VENETO州 I.G.T.

  色はほんのり淡く、日本酒のよう。香りは、バターやナッツなどのオイリーな印象があり、 グレープフルーツのようなさわやかさと共に、樽香もある。 色の印象とは大きく違って、かなりしっかりしており、まず、この段階で驚いた。 口当たりは、香りの印象に比べふくらみはなく、酸が中心。しかし、その酸も尖ってはいない。若干苦味がある。 甘味はほとんど感じない。最後までオイリーな感じは続き、イタリアの白にしては想像以上の充実度。 まったく期待していなかっただけに、\1,000でこの実力はびっくりした。 香りの印象は、南仏などのシャルドネに近いものがあるが、シャープさも兼ね備えており、決して冗長なワインではない。
<評定:A+>

2000年12月19日  ROUGE
COTES DU VENTOUX 1998 LES TRAVERSES/ PAUL JABOULET AINE
コート・デュ・ヴァントゥー レ・トラヴェルス / パウル・ジャブレ・エィネ
COTES DU RHONE地方、COTES DU VENTOUX地区、AC:COTES DU VENTOUX

  美しい深紅だが、縁はやや青紫色を帯びている。生き生きとした酸を中心とした香りで、若干のゴムっぽさもあり、 ふっくら、ころっと丸い感じ。口当たりも丸く、甘味がふくらむ。タンニンが強く、やや乱暴ではあるものの、後口はほろっとしている。 酸の筋が通っているが、最後に甘味が残り、やや鼻につく感じである。
<評定:C>

2000年12月23日  ROUGE
CHATEAU GISCOURS 1995 (GRAND CRU CLASSE) / MARGAUX
シャトー・ジスクール(グラン・クリュ・クラッセ / 第3級)/ マルゴー
BORDEAUX地方、MEDOC地区、MARGAUX村、AC:MARGAUX

  この時期、クリスマスから年末年始にかけては、通常、当日記で扱っているwineのレベルからは少々逸脱し、 安酒とは言い難いものも登場する。今日は、その第1弾である。
  色は極めて深く、光沢があるが、まだ若めということもあって、縁まで均一な黒っぽい色である。 香りはさすがに複雑で、力強く、しっかりとした樽香があり、丸く、どっしり落ち着きがある。 口当たりは想像以上に丸く、おだやか。しかしタンニンは少々暴れ気味で、まとわりつくが、それが締まった感じを与えてもいる。 極めて女性的でふくらみがあり、その意味では実にマルゴーらしいが、反面荒削りで大柄でもあり、 ただ単に優しいだけのワインではない。余韻も比較的長く、バターっぽい風味を残すが、どこか底の浅さを感じてしまうのも事実である。
  これは戴きものであるが、仮に自分で買ったとしたなら、値段に見合う感動が得られたかというと、答えは、いま一歩ということになろう。 しかし、味わいはともかく、香りを嗅いでいるだけで引き込まれてしまうのは、さすがである。
<評定:A−>

2000年12月24日  BLANC DOUX
LATE HARVEST SEMILLON 1996 / SANTA RITA
レイト・ハーヴェスト セミヨン / サンタ・リタ
チリ、MAIPO VALLEY(甘口)

Santa Rita Late harvest   美しく輝く黄金色。意外にもしっかりとした樽香があり、オイリーで、柑橘系の香りは弱いので、全体として骨太な印象。若干硫黄っぽい香りもある。 口に含んだ瞬間広がる豊かでこくのある甘味は、実にソーテルヌに似ている。酸も豊か。深みには若干欠けるが、 その分後口がさわやか。
  チリの極甘口は初めてだが、想像以上の実力に驚いた。たっぷりとした甘味は威風堂々としていて、 余韻もそこそこ続く。貴腐に優るとも劣らない。クリスマスケーキの生クリーム+イチゴの甘酸っぱさに完璧にシンクロした。
  セミヨン種とゲヴュルツ種が使われているということから、凡庸にならず、この凛とした酸味と華やかさが醸し出されているのだろうか。
<評定:AA>


2000年12月25日  BLANC
YELLOW ROSE 1999 / ROSE MOUNT ESTATE
イエロー・ローズ / ローズマウント・エステート
オーストラリア

  安葡萄酒を極めると、売場でボトルを見た瞬間に、これがイケるのかどうか、ピンとくるようになる。AOCを覚えて判断力がつくというような話ではもちろんない。 同じ産地、同じ品種でも、エチケット(ラベル)の雰囲気などで、こっちのほうが良いという勘が働いたりするものである。
  このwineは、見るからに"イケてなさそう"な感じであった。ボトルには、99年のINTERNATIONAL WINE COMPETITION で、WINERY OF THE YEARを受賞したというシールが貼られていたり、 売場にも、いかに優秀な作り手かというような説明が、醸造家の写真と共に貼り出されていた。しかし、私はやはり、直感的に"ダメ"と感じていた。 という状況でありながら、とにかく気楽に手っ取り早く白が飲みたいという動機から、ダメで元々という覚悟で買ってきた。さて、結果は…。
  色は淡く、やや緑がかっており、香りはオレンジやパイナップルのような甘酸っぱさと、まるでロウのような石油的香り(結構気になるほどの薬っぽさがある)。 口当たりは想像以上に単調、凡庸で、ただただ薄ら甘い。一昔前、wineブーム以前によくあった国産1,000円wineのような飲み飽きする甘さで、 果実味というのではなく、砂糖を入れたような甘さ。若干冷やし方が足りなかったので、キンキンに冷やしてから風呂上りにもう一度飲んでみたが、やはり印象は変わらなかった。 何とかして良さを見つけたかったのだが、無理だった。
<評定:E>

2000年12月31日  BLANC
SAINT-ROMAIN 1997 / OLIVIER LEFLAIVE
サン・ロマン / オリヴィエ・ルフレーヴ
BOURGOGNE地方、COTE DE BEAUNE地区、AC:SAINT-ROMAIN

  かなりしっかりした黄金色で、一見して期待が持てる。香りはオイリー、かつ香ばしいヘーゼルナッツのようで、若干の青みも感じる。 口に含むとまず酸が鋭いが、同時にふくらみもあり、ふんわりとした甘味も広がる。後味も鋭く、キレが良いが、オイリーな余韻がかなり続く。 すっきり、さわやかだが、尖った印象はなく、滑らかさも際立っている。
  ボーヌで最も無名なAOCなどと言われるらしく、以前はHAUTES-COTES-DE-BEAUNEに属していたとのこと。 確かにBEAUNEの他の偉大なwineに比べてシャープであるところが、それらしい。なかなか良い白であり、 通常の当日記レベルのwineと比べれば、明らかに品質は上だが、 入手価格(\2,000)を考えると、手放しで絶賛できるレベルではない。
<評定:B>


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