利酒日記

2002年6月


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2002年6月2日  BLANC
VILLA ANTINORI 2000 BIANCO / TOSCANA(I.G.T.)
ヴィッラ・アンティノーリ・ビアンコ / トスカーナ
イタリア、TOSCANA州

 イタリアにしてはしっかりめのイエローグリーン。やや湿ったグリーンな香りの中に、若干のオイリーさもある。 酸はシャープであるものの、味わいにはしっかりとしたふくらみがあり、後味には苦味と、雨上がりの草むらのような感じが。 甘味はないが、真ん中の充実した、いわば骨太な印象の白。もちろん、イタリアにしては、という条件付きではあるが。
 12本11,000円にて購入したうちの1本。単体価格は、\1,160。枝豆をつまみながら、アジの開きをつつきながら飲んだが、ぴったりであった。 そして、いちばんしっくりときたのが、きゅうりの塩もみだった。 イタリアの白は、いつも何に合わせようかと思案するのだが、結局、今日のように簡単なおつまみとか、普通の和食と 相性が良いようだ。あらためて、魚を食べる国の酒だと思う。
<評定:C+>

2002年6月3日  ROUGE
JALOCO RESERVA 1992 / VINO DE LA TIERRA DE EXTREMADURA
ハロコ・レゼルヴァ / ヴィーノ・デ・ラ・ティエラ・デ・エクストレマデューラ
スペイン

JALOCO RESERVA  色はやや濃いめの血のよう。暗紅色で、エッジは褐色。香りは、注いだ当初はまだ開いていない感じで、硬く、樽香の中にインクのような匂いも感じる。 口当たりも最初はとげとげしいが、熟成の片鱗は見える。時間が経つと、鉄っぽい血のような香りが立ってきて、 味わいも、ぐっとまろやかに。適度な重みと繊細さがうまく共存。年数が経っているからパワーが落ちているのか、 元々あまり力強くはないのか、重みよりもやや粗暴なタンニンが印象的。コーヒーのようなニュアンスが樽のヴァニラ香と混ざって、 少し甘いカフェオレのような後味をつくる。
 12本15,000円で購入したうちの1本。単体価格は、\2,000。短時間でもこれだけ色んな表情を見せてくれれば、十分満足。 敢えて抜栓直後に飲み始めて、時間を経るにしたがって訪れる変化を見たが、 まだ開ききっていないのだろうか。明日この残りを飲む時には、ちょうどよく丸くなっていることを期待したい。
 通常のキャップシールではなく、ロウで固められているので、コルクを抜く前にロウを削らなくてはならない。 しかもきれいには取れないので、抜栓後、注ぐ時にグラスにどうしてもカスが入ってしまい、非常に扱いにくい。しかし、敢えてこうしているのだろう。 慌てて飲むようなワインではありませんよ。じっくりと時間をかけてお付き合いください、という意味なのかな。
 VINO DE LA TIERRAという等級はフランスのVdPクラスだが、これはかなり気合の入った部類だろう。 セパージュは、"50% Cabernet Sauvignon, 35% Tempranillo, 15% Garnacha"と書かれている。 カベルネらしさは全然感じられないし、さりとてどの特徴がテンプラニーヨでガルナーチャなのかもわからない。 もしブラインドで品種を当てよ、と言われたら、悩みぬいたあげくに自信なく、ピエモンテのネッビオーロと答えるかもしれない。 この引き締まった動物臭から察して。
■翌日記■
 1日経ってもタンニンの粗暴さはいささかも変わりない。酸の尖りも同様。どうやら、かなり底力のあるワインらしい。 生臭い動物臭が増し、丸くなる気配はない。vacu-vinをしていたとはいえ、すごい。
<評定:B>

2002年6月7日  BLANC
CHARDONNAY BARON PHILIPPE DE ROTHSCHILD 2000 / VIN DE PAYS D'OC
シャルドネ バロン・フィリップ・ド・ロートシルト / ヴァン・ド・ペイ・ドック
VIN DE PAYS

 淡い麦わら色。カスタードのようなクリーミーな香りが中心で、柑橘香のような酸を感じさせる香りはほとんどない。 かすかにオイリーな感じがあり、抜栓して少し時間が経ったあとグラスを回してみると、フリンティな感じも出てきた (火薬とマッチの硫黄が合わさったような香り)。 味わいは酸が中心でシャープだが、クリーミーなふくらみもある。苦味はなく、後味はすっきり。 おしろいのようなパウダリーなフレーバーが残る。
 このワイン、店頭でみつけたとき、値札を1,260円と読んで買った。安いと思った。 ところが帰宅してからレシートを見ると、 実は1,620円であった。ビールなどと一緒に買ったため、お金を払う時には気づかなかったのだが、 もし1,620円とわかっていたら買わなかったかもしれない。確かに1,000円ワインよりは実力は上だが、 ブランド料が乗せられているような気がしなくもない。
 ところで、"ROTHSCHILD"をロッチルドとか、ロスチルドなどと表記していることがあるが、 原語読みに最も近いものを採用するという当サイトの方針から、以前より"ロートシルト"を採用している。 ロッチルトでも良いとは思うが。
<評定:C>

2002年6月8日  ROUGE
ROSARIO PRIVATE RESERVE CABERNET SAUVIGNON 1992
ロサリオ プライヴェート・リザーヴ カベルネ・ソーヴィニヨン
チリ、MAIPO

 12本15,000円にて購入したうちの1本だが、単体価格は\2,500。かなり期待を持って臨んだ。
 色は濃いめのガーネットだが、輝きがある。エッジはかすかに茶色かな、という程度で、年数を感じさせない。 香りはどっしりとしたヴァニラ香の中に、ミントのような清々しさもある。ここまでは、まだ驚きはない。 だが、口に含んだ瞬間、印象が一変。酸もタンニンも実にしっかりしているのに、それらはほどなくほろっと崩れ、 ふんわり優しい余韻を残して消えて行く。実にエレガント。 カベルネなのに、なぜかマスカットのようなフレーバーを残す。
 今の状態でも十分にまろやかだが、まだまだタンニンに硬さもみられ、相当に底力を持ったワインのようだ。 ほんのり甘味を感じさせるところがチリカベらしく、その点も好感が持てる。価格以上に贅沢な1本。 もしこれが2,000円未満なら、間違いなくA評価なのだが。
<評定:B>

2002年6月12日  ROUGE
CHATEAU D'AIGUILHE 1996 / COTES DE CASTILLON
シャトー・デギーユ / コート・ド・カスティヨン
BORDEAUX地方、COTES DE CASTILLON地区

 赤ばかり12本15,000円にて購入したうちの1本。単体価格は、\2,300。
 色は深みのあるガーネットだが、エッジはピンクで若い感じ。香りは、火薬のようなインパクトの後、深いアルコール感の中に、 チョコレートのような甘さとアクリルのようなケミカルな感じもある。グラスを回すとボルドーにしては珍しい動物臭も若干感じる。 味わいは、香りから想像されるものとはやや異なり、シャープな第一印象。酸が際立ち、甘味はほのかで、後味はクリア。 タンニンは比較的なめらかで、ジューシー。重みはない。
 この端正さは、まさに正統派。いかにも右岸的、いや、ドルドーニュ的。地区的にメルローが主体なのだろう。値段は安いが、久しぶりに偉大なワインに出会った感じ。 これで2,000円未満ならば、文句なくA評価なのだが。
 ところで、AIGUILHEという綴りは変則的な感じがする。"H"の部分が"L"ならば、普通なんだけど。
<評定:A−>

2002年6月16日  BLANC
HUGH HAMILTON CHARDONNAY 1998 UNWOODED / McLAREN VALE
ヒュー・ハミルトン シャルドネ・アンウッディド / マクラーレン・ヴェイル
オーストラリア、McLAREN VALE

 色は極甘口に近い、少しオレンジの入った濃い黄色。薄い山吹色と言ったほうが良いか。 香りは、火薬のようなインパクトと共に、ナッツのような脂っぽさが広がる。裏ラベルの輸入者の説明には、 「イチジクやトロピカルフルーツの香りが特徴。微かにメロンやグレープフルーツの香りもあり、 果実香と酸味のバランスがよい。」とあるが、この中で、確かにイチジクのような少し青くて酸っぱい香りは感じられ、 青さの点ではメロンというのも頷けるが、グレープフルーツのような柑橘香は感じなかった。 酢酸的インパクトが強いことから、少しイっちゃってる、あるいはイキかけてる状態だろうか。いや、これは変質というよりは、 個性なのだろう。
 入手価格\1,450。UNWOODEDとあることから、オーストラリアの中では反骨精神のある作り手なのだろうか、と想像したが、 フランスなどでのステンレスタンク使用と違って、「やっぱりオーストラリアだなあ」という感想。 らしさという意味では、評価できる。インパクトのないオーストラリアワインなんて、醤油をかけない冷奴みたいなもんだからね。
 さて、本件とは無関係だが、本日、当サイトではビール・発泡酒・チューハイの部屋をオープンした。 以前からある葡萄酒狂徒の日常茶飯事が、当初食の話題などを中心としたコラム集という位置付けだったのに、 ビール等のテイスティング記録が増えたために、独立させたもの。当利酒日記同様、宜しくお願いしたい。
<評定:C−>

2002年6月17日  ROUGE
FORT DU ROY 1997 LE GRAND ART / HAUT-MEDOC
フォール・デュ・ロワ ル・グラン・タール / オー・メドック
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、AC:HAUT-MEDOC

Fort du Roy  色はボルドーらしい深いガーネットだが、縁までほとんど均一。甘苦い香りの中に若干の樽香となめし皮の香り。 味わいは丸い酸と引き締まったタンニンが優美な印象を与え、微かな甘味と、後にふわっとしたヴァニラ香を残す。 実に安定感があって、上品。カベルネの良いところがうまく出ている感じ。このクラスでこの気品は、 ボルドー以外ではやはりありえないだろうと思う。
 入手価格は\1,690。この価格としては申し分ない。重みや深みには欠けるものの、この価格では致し方ないだろう。
 エチケットに描かれたぶどうの木の絵が、実にアーティスティック。ボトルから得た印象通りのエレガントさを持つ1本であった。
<評定:B>


2002年6月21日  ROUGE
CHATEAU JONQUEYRES 1998 / BORDEAUX SUPERIEUR
シャトー・ジョンケイル / ボルドー・スペリュール
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX SUPERIEUR

 色は赤みが強く透明感もあって、ブルゴーニュかと思うほど。香りはカシスのような黒っぽい香りが中心で、 時間と共に鉄っぽさもでてくる。輸入者の説明では、「カシス、トースト、ユーカリの香りに焦がした薪の香りが 複雑性を与えています。」とあるが、奥のほうに深緑のニュアンスがあるので、ユーカリと言われれば、そうかなあという程度。 トーストの匂いは感じない(トーストという表現は、小麦の焼けた感じとイーストの香りということだろうか)。 ましてや「焦がした薪」みたいな香ばしさや煙っぽさはない。それよりも、書店の店内のようなインクと紙の匂いとか、 墨汁のような匂いを感じる。酸化が進むと共に、ユーカリのグリーンな感じがかしわ餅のようになってゆく。 酸はシャープであるものの、口当たり、喉越しともなめらかで、タンニンはビロードのよう。
 入手価格\1,000。これだけ複雑さがあれば、十分にお買い得。深みや重みがないのは問題ではない。
<評定:B>


2002年6月22日  BLANC
BOURGOGNE CHARDONNAY 1996 CLOS DU CHATEAU / DOMAINE DU CHATEAU DE MEURSAULT
ブルゴーニュ・シャルドネ クロ・デュ・シャトー / ドメーヌ・デュ・シャトー・ド・ムルソー
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE

Ch. de Meursault Ch. de Meursault  ボトルがとてもどっしりとして重い。それだけで大きな期待感を抱かせてくれる。並のACブルゴーニュではないぞと主張している。
 色は黄色みが強く、味わいの重さを予感させる。香りは、火薬やイオウのようなフリンティなインパクトがまずあり、 ナッツやバターのようなオイリーな感じが下支えしている。グラスを回すと特にイオウっぽさが際立つ。 口当たりは極めてシャープ。香りの印象から、もっとグラマラスなものを想像していたが、意外に繊細で細身。 パワーはあるもののそれが奥深さにはつながらず少し上滑りしているのは、おそらくまだ若いからだろう。 もっと熟成させてから飲むべきか。
 12本11,000円にて購入したうちの最後の1本。単体価格は\1,980とのこと。
 もし、ブラインドで、「いくらだと思いますか」と問われたら、内心は上限4,000円と思いつつ、 「3,000円、いや2,500円だったらとっても嬉しい」と答える。それが約2,000円だなんて、驚きだ。
 ムルソーにあるドメーヌながら、味わいはもっと北を思わせる。シャブリ特級畑の中のシャープな部類かといった感じ。 ACブルゴーニュの白で、ここまで充実感のあるものは、おそらく初めてだと思う。
<評定:A>


2002年6月30日  ROUGE
RONCO NOLE 2000 / DI LENARDO / FRIULI(V.D.T.)
ロンコ・ノーレ / ディ・レナルド / フリウリ
イタリア、FRIULI-VENEZIA-GIULIA州

 かなり日が開いてしまった(上記22日から実に8日)のには、理由がある。この1週間は極めて多忙であった。 大阪〜東京間を3往復。すべて日帰りだ。しかも胃腸をこわし、もう最悪。さて、久々の味は、どうだろう。
 色はかなり濃いが、青みがかっている。乾いたコルクのような、きな粉のような香りがまずあり、華やかさはない。 その後に、メルローと思われるカシス的な黒っぽい香りが広がる。口当たりは甘酸っぱく、ここで初めてイタリアらしさを感じる。 力強さはないが、タンニンが荒々しく引っ掛かる。後味は意外とさっぱり。 等級こそ一番下のヴィーノ・ダ・ターヴォラ(V.D.T.)だが、なかなか複雑性がある。
 今回もまたネットで12本まとめて15,000円にて購入した。その1本目。私のお気に入りで、関西における高級スーパーの草分け的存在の いかりスーパーだ。確かな品質のものだけを扱っており、私は全幅の信頼を置いている。 ぜひ一度サイトをご覧頂きたい。
 単体価格は\1,290とのことだが、ほぼ値段に見合っていると思う。
<評定:C>


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